ウクライナ戦争における中東サウジアラビアの存在力が高まっています。ウクライナ支援の欧米諸国、ロシア支援の中国、双方の外交枠に交渉の架け橋。日本にとってもサウジアラビアとの関係は深く、原油総輸入量のうち約40%がサウジアラビア産、まさにエネルギー基幹国家であります。
サウジアラビアの圧倒的なエネルギー戦略の影響力はもちろんですが、数年前から急進的な国内変革にも注目が集まっています。ムハンマド皇太子が原油依存経済からの脱却を目指す『ビジョン2030』を推進。脱炭素を目指す産業多角化改革に日本の水素技術がパイプになると連帯のメッセージを送っています。ウクライナ戦争におけるロシア制裁ではアメリカとの友好関係を保ちながらも原油増産のアメリカ外交要求を拒否。サウジアラビアは石油輸出機構(OPEC)の原油減産を維持するバランス外交を展開しました。
外交戦術では中国の仲介で敵対関係にあったイランと国交を回復した実績が際立っています。日本に関してはサウジアラビアが日本の先端技術に期待を向けていることは周知の事実。特に脱炭素の柱である水素技術、アンモニア技術の協力体制構築が喫緊の課題となっています。中国や韓国の最新技術力が強まる中、日本がどこまで技術革新で向き合っていけるのか。サウジアラビアと日本の繋がりはもはやエネルギー供給だけでは語れない状況となっています。日本にとってサウジアラビアからの原油、天然ガスの安定供給は不可避であり、政情不安な世界情勢の中でサウジアラビアを主軸にした湾岸エネルギー供給網の確立は絶対要件。日本とサウジアラビアの関係値は外交戦略の要と言えます。
さらに、混乱が続く中東地域においてもサウジアラビアの舵取りは変化を見せています。これまで軍事力依存してきたアメリカの後ろ盾なしで中東安全保障体制を推進。力の空白を呼び込むと問題視されたアメリカの中東撤退がサウジアラビアの軍事、経済、宗教の牽引力を昇華させています。同時に隣国アラブ首長国連邦(UAE)との繋がりも再認識しておく必要があります。UAEからの日本原油総輸入量での割合は全体の約36%。中東一帯でのUAE政治体制の安定性は抜群。西側諸国のパイプにこだわらず世界規模での多角的外交を展開。敵対してきたイスラエルとの関係回復を果たしただけでなく、イランとの繋がりも懐柔策に傾く可能性があります。サウジアラビアやUAEの存在力に向き合っていくことは日本の技術、文化交流、脱石油産業への投資といった世界戦略の主軸になります。湾岸諸国の動向に注目しています。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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