サッカー女子日本代表『なでしこジャパン』が、女子W杯に出場しています。
カナダで開催されている今大会に、なでしこジャパンは連覇を賭けて挑みます。戦前の予想ではドイツ、アメリカ、フランスが優勝争いをリードし、佐々木則夫監督率いるチームは厳しい戦いを強いられそうだ、とも言われています。
男子の代表チームでU‐20(20歳以下)W杯、五輪、W杯に参加した私の経験に照らすと、世界大会で大切なのは「力を出せるか」ということです。力のあるチームだから世界大会に出場できるわけで、自分たちが持っている力を簡単に出せない、出し切れないところに、世界大会の難しさがあるのです。
その意味で、私は佐々木監督のマネジメントに期待しています。
今回のW杯にまつわるエピソードに、澤穂希選手の代表復帰があります。
前回大会でMVPと得点王を獲得した36歳のベテランは、およそ1年にわたって代表から外れていました。佐々木監督はなぜ澤選手を長く招集せず、W杯直前に復帰させたのでしょう。
男女を問わずすべてのサッカー選手にとって、W杯優勝は究極の目標です。年齢的にもキャリアの終盤を迎えている澤選手が、4年前の優勝によって大きな達成感に包まれてもおかしくない。分かりやすく言えば、「お腹がいっぱい」になってもおかしくなかったのです。
代表に呼ばれなかったおよそ1年の時間で、澤選手は「お腹が空いた」はずです。なでしこジャパンに選ばれることの重み、代表であることの価値といったものを、改めて感じたことでしょう。つまり、新しいモチベーションを充電することができたのです。
澤選手を外していた理由のなかには、新戦力の発掘を含めたチームの底上げを促す意図もありました。澤選手だけでなく、今回のメンバーの大半は4年前から変わっていません。それだけに、「世代交代が進んでいない」とか「若手が育っていない」といった批判的な声も上がっていますが、それは佐々木監督の責任ではありません。代表チームは選手を育てる場所ではなく、選手の育成を進めるのは日本サッカー協会です。
W杯に出場する強豪が顔を揃えた3月のアルガルベカップで、なでしこジャパンは過去最低の9位に終わりました。しかし、澤選手が復帰したあとのテストマッチでは、ニュージーランドとイタリアから勝利をつかみました。経験豊富な澤選手の復帰が起爆剤となり、自信を取り戻した状態でW杯を迎えることができたのです。このあたりの佐々木監督のチームマネジメントは、素直に唸らされますね。澤選手も心に闘志という火を灯して、カナダへ向かうことができました。
チームマネジメントについてもうひとつ触れると、今回から出場チームが「16」から「24」に増えました。前回はグループリーグを突破したら準々決勝でしたが、今回はグループリーグを通過してもベスト16です。優勝するためには、7試合を勝ち抜かなければなりません。
しかも、決勝トーナメントでは延長戦があります。4年前のW杯で、なでしこジャパンはアメリカとのファイナルをPK戦のすえに勝ち取りました。しかし、準々決勝のドイツ戦も、延長にもつれ込む死闘でした。
7試合を勝ち抜くチームマネジメントにおいて、なでしこジャパンはアドバンテージがあると感じます。思い出させるのは、2012年のロンドン五輪です。
南アフリカとのグループリーグの第3戦で、佐々木監督はスタメンを大幅に入れ替えました。なでしこジャパンは南アフリカと0対0で引き分け、グループリーグを2位で突破します。その結果として、準々決勝で強豪フランスとの対戦を避けることができた。決勝トーナメントでの戦いを見据えたうえで、グループリーグの順位を調整したのです。これはもう、佐々木監督だからできる決断だったでしょう。
ドイツ、アメリカ、フランスなどの監督に比べても、佐々木監督の経験は圧倒的です。世界大会では「力を出せるか」が重要だと先に述べましたが、2007年からなでしこジャパンを統べる佐々木監督は、チームの力を最大値まで引き出すことができるでしょう。
現地時間の6月6日に開幕した大会は、7月5日に決勝戦が行われます。なでしこジャパンはどこまで勝ち上がれるか。佐々木監督はどのようなチームマネジメントをするのか。チームのプレーだけでなく、指揮官の采配にも注目してください。
山本昌邦やまもとまさくに
NHKサッカー解説者
1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…
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