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コラム 人権・福祉

2015年06月18日

戦争に関わる宗教という存在

 宗教とはなんだろう。世界に足を向ければ向けるほど、いまだにこの疑問に直面します。日本での日常では、宗教行事は冠婚葬祭など特別な空間でしか触れる実感がありません。自分の家系がいかなる宗派をたどってきているのかを認識する方も決して多くはないと感じます。その反面、世界の国々では生活の基盤を信仰から整えていく国々が多く存在します。宗教が第一、生活は第二、極端にいうと宗教への帰依は自らの命よりも大切にされている地域もありました。

 

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 世界を混乱に引き落としている中東の過激派組織イスラム国をとっても、その言い分はイスラム教という宗教を前面に押し出した思想を掲げています。イスラム教の考え方を厳格に守っていくことを徹底し、抵抗することは一切認めない。その残虐な宗教思想は同じイスラム教徒から見ても賛同するものはなく、イスラム教を利用した武装組織にすぎないと語られています。宗教を利用することでここまでの基盤を整えることができるという現実を見せつけました。

 

 

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同じく中東全域に宗教という視点で目を向けてみるとある国の存在に目が止まります。それはパレスチナ地域に建国されたイスラエルの存在です。1947年国連決議で複数の宗教の聖地が混在するエルサレムをアラブ側とイスラエル側に分断しました。翌年、1948年にイスラエルが独立を宣言。アラブの土地に突然建国されたイスラエルにアラブ人は激怒、即戦争を仕掛け第一次中東戦争が勃発、第四次中東戦争まで続きました。問題となったエルサレムは4つの地区、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、アルメニア正教に分けられています。そのうちユダヤとイスラム教との聖地はイスラム教側ではハラム・シャリーフ、ユダヤ教徒側は神殿の丘としてその一画は交わり、いまだ聖地を巡った戦闘の要因となっています。

 

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 戦争は民族や領土、国境、環境など様々な理由で勃発することが多く、宗教問題という入り口は、歴史上何度も繰りかえされてきたもっとも大きな原因の一つと言えます。中東に限らず、世界中に宗教問題を起因とする戦争が多数存在しています。ウイグル問題、チベット問題、ミャンマーでの難民となっているロヒンギャ族の問題も重なります。アフリカ、スーダンが分裂した背景にもイスラム教徒とキリスト教の衝突がありました。宗教の存在やその歴史を知ることが紛争解決や世界情勢をひも解く大きな力になることは間違いありません。そして宗教とはなんだろう、これを結論づけることほど難しいものはありません。

渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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