今までは、日本やメジャーの選手達から僕が学んだ事を書いてきましたが、
今回は少し自分の話をしたいと思います。
僕は高校を卒業して一度就職したものの、好きな野球をこのまま終わりにしたくない
「夢を夢で終わらせたくない」その一心で、プロ野球球団の入団テストを受けました。
7球団のテストを受けましたが、最終選考まで残りながらも、いつも結果は不合格。
その理由は168cmという身長でした。
ある人には168cmしかない身長では、投手しては無理だと言われました。
時には、左投げだったら採用するよと言われた事もあります。
そんな中、打撃投手としてなら、
オリックスの枠が空いているという話をもらいました。
僕はチャンスだと思い、そこに飛び込みました。
1992年。僕がオリックス・ブルーウェーブに入団したのは、20才の年です。
しかし、前述したように選手としてではなく、打撃投手としての入団でした。
打撃投手とは、毎日選手が活躍をして欲しいと願い、
練習でストライクを投げ続ける仕事。つまり選手を陰で支える裏方の仕事です。
1日に120球から150球前後のボールを毎日投げていました。
(※プロ野球の先発投手が1試合で投げる球数)
しかし、気持ち良く打たせるボールと自分の向上する
(現役選手を目指す)ためのボールは、
まったく別で、毎日、自分の肘はぼろぼろになっていきました。
それでも、現役のプロ野球選手を目の前で見ることで、
プロ野球選手になりたい気持ちは日々強くなっていき、
“現役”の夢が僕の中から消えることはありませんでした。
オリックスでの2年間の在籍を経て、当時の監督である仰木さん、
イチロー選手に相談し、『挑戦して、がんばれ』の言葉をもらい、
それに勇気付けられ挑戦することを決意し、プロテストに挑みました。
しかし、自分の中で満足のいくピッチングができず、
阪神タイガース・ヤクルトスワローズの2球団を受けましたが、不合格の結果。
ヤクルトのテストでは、
当時の監督 野村さんに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
阪神でのテストでMAX144キロの数字が出ていたのですが、
それで肘を痛めて、全力で投げることができない状態でテストに挑むことになり、
自分の中では、 これで野球ができなくても最後のテストになるから、
思う存分楽しもうとの思いでの挑戦でした。
テストでは、野村監督はピッチングを見ると、自分のボールが全然良くない中で、
ウォームアップの走り方・マウンドでのグラブさばきを見て、
野手が出来るんじゃないかと30m走を測定し、そのタイムが良かったため、
急きょ野手として3日間のテストを受けることになりました。
そのなかで、野村監督と2人きりになり、
室内練習場で打撃を見てもらうことがありました。
高校以来、4年ぶりに本気で打撃をした自分に
『お前の気持ちが分かる。 わしもテスト入団やからな。』
『自分に合うバットはこれから見つければいい。』
と声を掛けていただいたことが今でも心に残っています。
帰りの飛行機では、自分の荷物が持てないほど手の皮がずるむけになり、
その手を見て本当に幸せな気持ちになりました。
結果は、当時、選手登録が70人という枠があり、
自分が入ると71人になるという理由から、残念な結果となりました。
しかし、 野村監督との2人きりの時間は今でも最高の思い出となり、
やれることはやった。 と思いました。
今振り返ってみると、ネックになっていた168cmという身長があったからこそ、
身長が低くても、絶対に選手になってやる、大きい選手には負けたくない、
という「なにくそ魂」が生まれました。
そして、この気持ちが自分を支え、大きな原動力になったことは確かです。
その思いが通じたのかは分かりませんが、
僕の活きたボールを打ちたいと言ってくれた選手もいました。
負けたくないという気持ち。
今ももちろん、持ち続けています。
奥村幸治おくむらこうじ
ベースボールスピリッツ代表
イチロー選手が210安打を達成した時に、イチロー選手の専属打撃投手を務めていたことから“イチローの恋人”としてマスコミに紹介され、以来コメントを依頼されてのテレビ出演多数 。 1999年に中学硬式野…
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