中東情勢不安定化

昨年10月7日に勃発したイスラエルガザ軍事侵攻。4ヶ月以上の戦闘で2万7000人以上の犠牲者が確認される中、ガザ地区ハマス指導者ハニヤ氏がイスラエル軍との停戦受入れを条件つきで提示しました。イスラエル軍のガザ地区完全撤退を要件とし停戦交渉仲介役のカタールが協議の舵取りを担当。実際にイスラエル政府がハマスに対し最長2ヶ月の戦闘休止を提案した情報も錯綜しており双方へのつながりをもつカタールとエジプトの存在力が高まっています。

ガザ軍事侵攻が長期化する中、イスラエル政府による情報戦がハマス越境攻撃の根幹を揺さぶり始めました。問題となったのは国連のグテレス事務総長が発表した国連パレスチナ難民救済事業機関（UNRWA）の職員がハマスによるイスラエル奇襲攻撃に関与した疑いを指摘したことです。すでに関係者9名の身元を特定しておりイスラエル支援のアメリカとイギリスはUNRWAへの資金提供を停止しました。さらにガザ軍事侵攻が続く中であってもイスラエルはパレスチナ自治区へのユダヤ人入植活動を強行。パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地域でユダヤ人入植者によるパレスチナ住民への暴力事件が拡大しており、アメリカのバイデン大統領は事件に関わった人物への制裁措置を発表しました。現時点でヨルダン川西岸地域でのユダヤ人入植地数は279、入植者数は約70万人であります。

ここまで拡大した民間人の犠牲を問わないイスラエルの軍事攻撃には世界各国から司法による抑制要求と軍事攻撃を伴った報復の連鎖が突きつけられています。南アフリカはイスラエルによるガザ軍事侵攻を国際司法裁判所（ICJ）に提訴。ICJはイスラエルに対しガザ領内における大量虐殺（ジェノサイド）を防ぐ対処措置を要求しました。南アフリカは植民地主義や人種差別（アパルトヘイト）に苦しんできた歴史背景を持ちガザ軍事侵攻での虐殺の判断を世界世論に問いかけました。イスラエル側は自衛権を盾に猛反発しています。

報復攻撃の連動ではイスラエル軍による周辺国への越境攻撃が広がりイラン革命防衛隊軍事顧問爆殺やレバノンでの人質解放交渉を担ったハマス政治部門幹部殺害がイランによる報復攻撃を引き起こしました。イエメン拠点のイスラム組織フーシは紅海アデン湾一帯で各国の商船を襲撃。イスラエル、アメリカ、イギリスに関わる船舶は積荷所有国関係なく攻撃対象と発表。ヨルダンではイラン支援の武装組織によるドローン攻撃でアメリカ軍兵士3名が死亡しました。イラクとシリアでもイランと連帯するイスラム武装組織によるアメリカ軍駐留基地へのミサイル攻撃が150回以上確認されておりバイデン大統領はアメリカ軍による大規模報復攻撃に着手したことを発表しています。
ガザ軍事侵攻の軍事混乱が中東全域に急拡大しています。