イスラエル軍によるガザ軍事侵攻勃発から約6ヶ月。ガザ領内での犠牲者数は3万3000人を超えました。イスラエルによる民間人殺害を抑制するため世界各国が戦闘停止のための仲介外交を繰り返してきましたが、イスラエルとハマス双方が不可能と言える休戦条件を突きつけ合い、現時点において合意には至っていません。ハマスの要求はガザ領内からイスラエル軍が完全撤退すること。イスラエル側は人質の全員解放と戦後治安維持体制をイスラエルが管理することを提示しています。
さらにイスラエル軍は、休戦条件が噛み合わなければガザ最南部150万人の避難者が殺到するラファへ地上侵攻する脅しに踏み込みました。戦闘停止の線引きと言われた3月10日前後から始まったイスラム教断食月ラマダン期においても、イスラエル軍は攻撃を続け、ガザ中部ヌセイラットへの空爆で36人の死亡が確認されました。さらに食料搬入が規制されるガザでは約50万人が飢餓状態にあり、エジプト国境ラファからのトラック搬送はイスラエル軍の強硬な検問で制限されています。世界各国が人道支援として、ガザ地区へ海路を使った輸送ルートを模索。地中海キプロスから支援物資の段階的海上輸送を開始したものの、現実的な緊急事態回避に至りませんでした。
イスラエル政府は今回のガザ軍侵攻の首謀者として、ハマスの軍事部門最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏を開戦当初から追跡。ハマスが民間施設の地下に軍事拠点を構築しているとして、ガザ北部最大規模のシファ病院を爆撃し、90名以上のハマス関係者を殺害しました。ガザ完全制圧が最終段階に入りつつあることを発表しています。
犠牲者が拡大するガザ軍事侵攻を巡り、国連安全保障理事会への休戦仲介外交の期待がかかるも、常任理事国のアメリカやロシア、中国が決議への拒否権や棄権を繰り返し国連そのものが機能不全に陥っています。さらに、ガザへの支援活動を続けてきた国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の一部職員がハマスとの協力関係にあった事態が判明し、世界各国がUNRWAへの資金拠出を遮断しました。日本は情報精査のうえ、ガザ飢餓状態回避のため資金連帯を再開する方針を決定しています。子どもたちの犠牲を少しでも抑えるために戦闘の一時休止が何よりも求められています。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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