8ヶ月以上続くイスラエル軍によるガザ軍事侵攻。ガザ領内の犠牲者が3万6000人を超える中、イスラエルとイスラム組織ハマスの休戦協議再開の機運が段階的に高まっています。
アメリカのバイデン大統領が交渉要件を提示。6週間の完全停戦を経てハマスの人質解放とイスラエル軍のガザ人口密集地からの撤退を提案しました。イスラエル政府はエジプト、カタール、アメリカの仲介を経て人質完全解放手続きを繰り返し確認するも、イスラエル戦時内閣内部でハマス壊滅派と戦闘停止派に政争分裂。徹底抗戦を掲げるユダヤ強硬派組織が連立政権に頼るネタニヤフ首相に対し、協議反対と連立政権離脱の脅しを強めています。野党勢力は戦闘停止交渉への舵取りを支持し、交渉次第ではネタニヤフ政権を支える声明を出しました。さらに戦闘停止派であるガンツ元国防相はアメリカやアラブ諸国を絡めた今後のガザ統治指針の枠組みを想定することで、疲弊するイスラエル国民のための政治体制再構築が可能であると投げかけました。ガザ軍事侵攻をめぐっては国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルへ即時戦闘の停止を宣告しています。イスラエル政府はICJによる強制力を拒絶。ガザ最南部ラファへの空爆を強行しました。ラファの人道避難地域の一部では45名以上の民間人が死亡。イスラエル軍はハマス戦闘員潜伏拠点への爆撃と主張するも繰り返される民間人大量虐殺(ジェノサイド)を世界各国が非難しています。
ラファには約150万人の避難者が殺到しており膨大な犠牲者の拡大は避けられません。ICJだけでなく国際刑事裁判所(ICC)もガザにおける民間人殺害攻撃はジェノサイドと指摘しており、イスラエル・ハマス双方の指導者に逮捕状を請求しました。ICCによるネタニヤフ首相やイスラム組織ハマスの軍事部門トップであるヤヒヤ・シンワル氏への逮捕状請求は外遊先での拘束力が発生するも、かつての逮捕状請求者は地域連帯の国々での移動が可能であった実情があり、ICCの発令効果は限定的と言えます。
パレスチナ自治区に関してはスペイン、ノルウェー、アイルランドがパレスチナを国家承認する外交指針を発表しました。イスラエルはパレスチナとの二国家共存は認めておらずガザの戦後統治体制はイスラエル管理下に置くことを主張しています。ガザ休戦協議の効力は現時点で保障されていません。イスラエル軍による戦闘を一時停止させ、民間人の犠牲を止めることが双方の要求を擦り合わせる絶対条件と言えます。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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