6月10日、Appleの開発者向けの年次イベントであるWWDCが開催され、多くの新技術が発表されました。今年は新しいハードウェアの発表は無く、OSの新機能などのソフトウェア、Apple Vision Proの米国以外での発売などが中心でした。
その中で最も期待され注目されていたのが生成AIへの取り組みで、これについては期待どおり「Apple Intelligence」として発表されました。しかし、皆がAppleに期待していたであろう「ワクワクする機能」「夢のような機能」ではありませんでした。
Siriが曖昧な質問にも答えられるようになり、アプリを横断した複雑なタスクをこなせる、電話での通話内容をテキスト化できる、写真からテキスト情報を抽出してフォームに入力できる、メールの添削をしてくれる・・どれも確かに生成AIならではの便利そうな機能ではありますが、どれも、どこかで見たことのある機能です。Microsoftは半年以上前に同じ事ができていましたし、今では他の生成AIが遙かに先を行っています。しかも、すべては「当面英語での提供」です。他の生成AIはとっくに他言語対応しているのに・・と思ってしまいます。
これを「残念」と言ってしまっては、Appleが可哀想かも知れません。Appleは現在の技術の範囲内でのベストな機能を提案しているはずです。新しいユーザー体験を生み出すことにかけては世界のトップを走るAppleですら、生成AIの「思いもよらなかった使い方」は発見できなかったということでしょう。結局、他社が行っているような機能をさらにブラッシュアップして、より便利に使えるようにする、という方向性になったものと思われます。「Appleが提供するのだから、他社よりはかなり使いやすいはず」という期待は持てますが、それを確認できるのはもう少し先、それも英語のみということになります。
これは、ある意味で現在の生成AIの限界というか、現実的な使い道が見えてきたということかも知れません。ChatGPTが発表されてから1年半、世界中が新しいAIの誕生に熱狂し、その可能性には際限が無いかのような騒ぎが繰り広げられました。しかし、ここへきて、生成AIの使い方がある程度固まってきたということではないでしょうか。「何でもできる」という根拠の無い熱狂から、地に足の着いた活用へと踏み出す第一歩なのかも知れません。
大越章司おおこししょうじ
株式会社アプライド・マーケティング 代表取締役
外資系/国産、ハードウェア/ソフトウェアと、幅広い業種/技術分野で営業/マーケティングを経験。現在は独立してIT企業のマーケティングをお手伝いしています。 様々な業種/技術を経験しているため、IT技…
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