ガザ戦後統治体制

昨年10月7日にハマス越境攻撃で発生したイスラエルガザ軍侵攻。これまでイスラエル側の犠牲者は約1300人、ガザ地区での犠牲者は少なくとも3万7000人に及んでいます。戦闘の長期化により、ガザの全人口約230万人のうち支援物資搬入遮断による飢餓状態は200万人に及ぶことが指摘されました。人道危機の警告を受けイスラエルとアメリカは、ガザ南部ハンユニスから国境までの幹線道路の一部支援輸送ルートの承認や地中海搬入桟橋の構築を進めるも食料搬入の実績は上がっていません。まさに人道支援物資は枯渇状態となり、エジプト側国境で足止めされた大量の食料の一部が腐敗する事態も確認されました。

ガザ戦後統治体制を巡っては、イスラエル戦時内閣内部で分裂症状が浮上しています。イスラエルのガラント国防相はハマスが掲げるイスラム思想の完全壊滅は不可能であると言及。同時にイスラエル軍ハレビ参謀総長は約9ヶ月の戦闘でハマスの戦力機能は喪失したことを発表するなど、指揮系統での情報乖離が目立ち始めています。イスラエル連立政権を担うネタニヤフ首相に至っては、ハマス壊滅を要求するユダヤ強硬派からの突き上げを受け入れることで、政権運営を解散瀬戸際で保っているのが現状であります。

イスラエル軍の戦術はすでにガザ戦後統治体制の構築にシフトしました。休戦協議はハマスとの要求が噛み合わず交渉が停滞する中、ハマスに連帯を誓うイスラエル北側隣国レバノン拠点のイスラム教シーア派武装組織ヒズボラがイスラエルへの越境攻撃を拡大させています。ヒズボラとはイランの軍事支援を受けるレバノン拠点の武装組織。意味は『神の党』。1982年創設され最高指導者はハッサン・ナスララ氏。戦闘構成員は約4万5000人とされ政治政党として貧困・教育・福祉支援活動を展開してきました。ガザ軍事侵攻に連鎖した約９ヶ月の戦闘でヒズボラ側はすでに400人が死亡。ヒズボラ司令官殺害事件では報復措置として数百発のロケット弾をイスラエル領内に打ち込みました。イスラエル軍はヒズボラへの攻撃計画を承認しており、イスラム組織ハマスを支える親イラン武装組織による戦闘が中東全域に拡大していくことは必至であります。現時点においてカタール、エジプト、アメリカ仲介のガザ一時休戦協議は事実上の遮断状態となっており戦闘の一時停止と緊急物資搬入が最優先事項として世界各国が支援体制を強めています。今この瞬間も多数の子供達が爆撃と飢餓により命を落としています。