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2024年10月11日

イスラエル軍レバノン軍事侵攻

イスラエル軍による北側隣国レバノンへの地上侵攻が始まりました。イスラエル軍は、レバノン拠点のイスラム教シーア派武装組織ヒズボラへの報復攻撃として最高指導者ハッサン・ナスララ師を殺害。イスラエル軍とヒズボラの軍事衝突は2006年7月にも勃発した経緯があります。
当時のイスラエル・レバノン紛争では、今回のイスラエルの攻撃のように首都ベイルート南郊にあるヒズボラの拠点を集中的に爆撃。さらにヒズボラの拠点であるレバノン南部のベントジュベイルやサイダがイスラエル軍の大規模爆撃を受けました。当時の攻撃では、市民の犠牲をできる限り抑え込みヒズボラ関係者、関係地域を攻撃集中対象にしていた特徴。今回の爆撃ではガザ軍事侵攻のようにレバノン国民、ベイルート市民が犠牲になることを厭わない戦術をとってきています。イスラエル軍にとってのガザ制圧の戦術成功モデルをレバノンにそのままシフトさせてきました。

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今回のレバノン越境攻撃はイスラエル軍ガザ軍事侵攻最大の戦術目標であったハマス拘束の人質完全解放をイスラエル軍は完遂できていないことに繋がりがあります。イスラエル国内からは人質解放交渉を破壊するイスラエル軍の強硬姿勢にイスラエル国民が反発。イスラエル軍は北部地域の住民に対しハマスに重なるヒズボラによる人質拘束事件の二の舞を断じて許さずの攻撃速攻性が際立ちました。

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実際にこれまで国境沿いでの小規模な軍事衝突は断続的に続いていました。現実的にヒズボラ側が戦闘の暴走を止めることができていたのは、イスラエルに殺害されたヒズボラの最高指導者ハッサン・ナスララ師が戦闘拡大を抑え込む歯止めとなっていた背景があります。ナスララ師が評価されてきたのは、軍事攻撃と交渉抑制のバランスを保つことができたこと。ガザ軍事侵攻においては、ガザ市民の犠牲を止めるための戦闘停止協議への期待を高めるためにイスラエルへの攻撃をナスララ師が抑制させていたことがありました。

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イスラエルに関しては、ガザ開戦当時からネタニヤフ首相は軍事侵攻が数年にわたる長期戦になると断言していました。これはガザ制圧が隣国のレバノン、イエメン イランに飛び火することを想定した戦術体制の宣言でもあり、現状況は想定内の戦闘拡大の構図であります。アメリカの地中海米軍空母派遣もこの戦術に防衛連動しています。まさにイスラエルは昨年10月7日ガザ軍事侵攻の時点で、ハマス支援のヒズボラやイエメン拠点フーシとの戦闘準備がなされていたと言えます。最大のネックは、シーア派の指導者である大国イランがイスラエルとの直接軍事衝突に踏み切るかがレッドラインとなります。パレスチナ問題の歴史は深く、イスラエル軍は複合的な戦闘を常に意識し展開してきました。ガザ地区のハマスが引き起こした1200人以上の殺害、250人を超える人質拘束事件を二度と繰り返さないこと。イスラエル北部住民の人質拘束を断じて許さずの表れがレバノン地上侵攻の最大の理由と言えます。

渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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