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2005年09月01日

自分を信じて

心優しきサッカーマンとの出会い。それは私の宝物。
ご存知、辛口の名サッカー解説者としてお馴染みのセルジオ・越後さんのことである。

セルジオさんは日系ブラジル人。30年以上も前にブラジルからはるばる日本にやってきた。日本サッカーリーグ藤和不動産の助っ人として。現役引退後に一度は帰国も考えたそうだが、日本に留まることを決意。日本サッカー発展のため、子供たちにサッカーの素晴らしさ楽しさを伝えるためであった。
以後、延べ50万人以上のサッカー少年たちを指導し日本サッカー界に愛情を注ぎ続けている。

私がセルジオさんに始めて会ったのは小学生の頃である。グランドで元ブラジル人プロサッカー選手の足さばきに圧倒された。「オチビさん、僕から ボールを奪ってごらん」。この言葉に挑発された小学生の私は必死に突進した。しかし、軽くあしらわれるだけ。悔しかった。涙が出そうなくらい悔しかった。その直後、元プロサッカー選手から出た言葉はこうだ。

「どうしたハチューダ、へたくそー」

初めてプライドが傷つけられた瞬間だったのかもしれない。いや、サッカーへの情熱が更に燃え上がる瞬間だったに違いない。少年の小さな胸に、……いつか見返してやる、という思いが宿ったのだ。これが、セルジオさんが私に贈ってくれた最初の優しい言葉だった。

他にもセルジオ語録はたくさんある。それが、いつも私に勇気とエネルギーを与えてくれる。

例えば・・・・
山梨県庁を辞めて、指導者としてサッカーの世界で再び挑戦したいことを相談した時のことを思い出す。多くの知人がそうだったように、反対されたらどうしいうと緊張していると、セルジオさんは逆だった。

「ハチューダは何かメッセージを持っている男だよ」
そう言って、私の背中を押してくれたのであった。

更に、スペインの・バルセロナ留学時代にも勇気を与えてくれた。留学して1年が経とうとしている頃だった。テレビの仕事でバルセロナを訪れたセルジオさんと久しぶりの再会。まずFCバルセロナのホームスタジアム、カンプ・ノウで待ち合わせをし、その後、私たちは車で地中海沿いレストランへ向かった。昼食をとるためである。その途中、海に向かってランブラス通りの突き当たりにある、コロンブスの塔の前を通り過ぎた直後、セルジオさんがこんな話をしてくれた。

「なあハチューダ、ボクも30年も前にブラジルから日本にやってきた。最初は右も左も分からない、日本語もぜんぜん分からない。家の電話が鳴るたびに怖くて、布団をかぶせて怯えていたんだ。それから、現役を引退して子供たちを指導して全国を回っている時によく考えたんだ。ボクの今やっていることは正しいのか、本当に日本にサッカーの未来はあるのかってね。でも、自分を信じてやってきた。ハチューダも自分を信じるんだよ」

正直、信じられる自分を探すのは難しかった。
でも異国の地で壁にぶち当たった時、いつもこの言葉を思い出していたのである。

セルジオ・越後/優しきサッカーマンは今日も元気に日本サッカーの未来を見つめている。先日、車椅子の指導者としての難しさに落ち込んでいる私に、また言葉をかけてくれた。

「人生は心電図のようなものだと思わないか。勝ったり負けたり、泣いたり笑ったり、上がったり下がったり、様々な波があるから面白いんだ。心電図が直線になったら死んだってことだからね」

羽中田昌

羽中田昌

羽中田昌はちゅうだまさし

サッカー解説者

サッカーの名門・韮崎高校にて2年連続全国大会準優勝。韮崎高校の黄金期のエースとして、その名を轟かせるが、高校卒業後、交通事故に遭い、脊髄を損傷、下半身不随の生活を余儀なくされる。その後、県庁に9年間勤…

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