いままでファッションは、デザインという次元と平行して、消費や物欲の次元でも影響力のある世界と捉えられてきました。そして実際それらが原動力となり、ファッションという産業やマーケットを支えてきたのです。
ところが、21世紀に入り、ファッションの世界は他ジャンルと同じく、大きなパラダイム・シフトを求められはじめました。
デザインに関していえば、20世紀にほぼ全てのデザインは出尽くした、といえるでしょう。その証拠に、21世紀に入ってからのパリ・ミラノコレクションでは20世紀デザインのおさらい状態が続いています。ちなみに、今年の秋冬のモードのテーマは「80年代(エイティーズ)」。
ごく一部のクリエイターを除いて、ファッションのデザインそのものを進化させようという動きは、極めて志の強い少数派となりつつあるのです。
加えて、ファッションが生産される背景にも、光が当てられ始めています。じつは、ファッションは、農業以上に水を使う産業です。農薬や染料など、地球を汚す化学物質を大量に使います。そのうえ、大量生産により大量廃棄される現状や、農地や工場で利益をあげるために非人道的な児童労働が行われるといった陰に隠れていた実態もジャーナリストたちによって明らかにされてきました。つまり、「ファッションこそがもっとも非エコな産業だった」という背景が、しだいに明らかになっているわけです。
美しさを追求してきたはずのファッションが、「こんな現実を抱えているなんて!」と思われるむきもあるでしょうが、すでにネクストステップへの動きは始まっています。
ファッションの今後を探る動きとして、大きく二つあります。一つは前回のコラムでもお話した「エシカル」な動き。こちらは、オーガニックコットンをはじめ天然繊維を用いるファッション、フェアトレード、手作りや手作業によるプロダクション、リサイクル、さらには生産のプロセスがエシカルであることを証明する動きなど。食べ物のように「トレーサブル」なファッションが、今注目を集めています。また今後この価値はより高まり、消費者の心を動かすようになるはずです。
もう一つは、「アートとのコラボレーション」という動き。アーティストとの特別コラボレーションによる限定商品の開発、ファッションブランドによる巨大なアート・エキシビションの開催など、より魅力的なブランドであり続けるために、アートのインスピレーションとコラボレーションする、そんな動きが華やかに展開されています。つまり、デザイン自体の進化を目指すファッションから、「話題作り」も含めた、ファッションを取り巻く環境自体を大きく進化させる流れへと、軸が変わりつつあるのです。
いつの時代も、ファッションが着る人の魅力をアップさせる素敵なサプリメントであることは変わりません。今後は、この日本からより魅力的なファッションを生み出すために、日本発のクリエイターの育成、さらに日本の繊維産業の育成により力を入れていく必要があります。変わり始めたファッションの世界に今後も注目し続けていきたいと思います。
生駒芳子いこまよしこ
ファッション・ジャーナリスト
VOGUE、ELLEを経て、2004年よりmarie claireの編集長を務める。2008年10月に退任。その後ファッション雑誌の編集長経験を生かして、ラグジュアリー・ファッションからエコライフ、社…
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