ここは中国東北地方遼寧省瀋陽にある中学校。私は日本からやってきた臨時講師として教壇にたった。この中学校では外国語の授業として日本語をカリキュラムに取り入れており地域の進学校として名を轟かせていた。卒業者は世界中の企業に就職をしていくという。
なぜ生徒たちは外国語のカリキュラムとして日本語を選ぶのか。日本語担当教師は説明する。
「ここでは日本語はもちろん、英語やロシア語を学ぶことも可能ですが、語学授業の選択権はすべて子供たちにあります。日本語を学ぶ学生がこの地域に多いのには理由があります。まず日本が地理的に近いということ、そして日本には魅力ある企業がまだまだたくさんあることを知っているからです。子供たちはこの学校に入学する為に熾烈な受験戦争を越えてきている。中国では勉強ができれば人生を変えることができる。
何世代と続いてきた農民の子供でも、世界中の学校に進み、就職し、故郷の家族に恩返しができる。そのため両親や親類たちはお金を出し合って子供たちにベストな教育を受けさせてあげたいと力を合わせます。生活の大変さを子供たちもよくわかっているので、勉学に全精力を捧げるのです。このがんばり屋の子供たちが将来の中国を引っ張っていってくれるのです。」
生徒たちの生活習慣を密着取材で体験させてもらった。そして学生たちの勉学に対する真摯な姿勢と我慢強さ、毎日の規則正しい時間の過ごし方に驚愕した。一言で言えば一日中勉強しているのである。
とにかく子供たちのスケジュールは過酷だ。朝5時30分に起床、朝食を済ませて朝の予習をこなす。学校に登校してからは一日7コマの授業をこなし、下校後は再び復習、予習を繰り返す。ほとんどの子供たちが寮生活を送り、外の世界との接点は学校と寮を行き来する間だけである。子供たちに「勉強ばかりで疲れない?」と聞くと日本語で「疲れません。」と答えてくる。
生徒たちは日本で就職するのだという明確な目標を掲げており、夢を成就できるのであれば勉強は全く負担ではないという。さらに生徒たちは勉強三昧にも関わらず元気がよく、校舎ですれ違うと「こんにちは!」と頻繁に挨拶してくる。授業中に「日本のことで質問ありますか?」と問うと我先にみな手を挙げて日本の音楽のことやアイドルのことを細かく聞きたがった。勉強では学ぶことのできない日本のリアルな生活習慣に興味津々の様子であった。
今の中国の底力はまさにこの学校教育が支えている。家族、地域一丸となった中国教育事情は愛情に溢れていた。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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