政府は6月の月例経済報告で、事実上の景気底打ち宣言をしました。とはいっても、わたしたちの生活は相変わらず厳しく、夏のボーナスも減額という家庭も多いのではないでしょうか。
そこで、「シンプルライフ」の提案を。自分の好きなように生きることを可能にする生活スタイルとして、お金から自由になること、モノから自由になること、働くことから自由になること、流行から自由になることが目的です。
特に、お金に関しては3つの原則を守れば、シンプルライフの基礎ができると考えています。その3つとは、以下のとおりです。
1)収入の範囲内で生活すること
2)借金をしないこと
3)1と2の原則を一生涯守り続けること
簡単な原則ですが、毎日の生活でこれを実行することは、そう簡単なものではありません。1の原則どおり収入の範囲内で生活ができるようになれば、天引きの貯蓄を始め、手取り収入の範囲内での生活ができるようになります。そうすると、お金を貯めることが時間との関数になり、基礎となるお金作りができます。2の無借金の原則は、どうすれば借金しなくて済むか、もしくはどうすれば借金の期間を短くできるかがポイントです。
ここで、相談者A子さんのお話を紹介します。A子さんの家庭は、夫がリストラにあい子会社へ転籍。収入は半分になり仕事は以前より厳しくなった。子供は高校生。お金が一番要る時期に収入の減と、先が見えない状態に。A子さん自身もパートに出ているが、夫の減収を埋める程度にもならず、どこから解決すれがよいのかというもの。
本当に、人の気持ちを暗くさせるのは借金です。
まずは、借金の苦悩、つまり住宅ローンから開放されることを目標にしてはどうか、とアドバイス。その後、A子さんはローン返済の一点に集中したようです。ローン残高が1500万円を、まずは手持ち資金の800万円に、親兄弟から無利子の600万円を借り、最後に100万円は彼女の預貯金で完済したそうです。A子さんの夫は「これで、新しいことにも挑戦できる。心に重圧をかける借金がないだけで、どれだけ心が軽くなるか。毎日の節約など苦にもならない。住むところさえあればなんとでもなる。さあ、がんばろう」と言ったそうです。
借金からの重圧は、生真面目な者にとっては、大きな負担を感じさせるものです。
「住宅はローンを組まないと買えない」といわれるでしょう。かつて経済成長の時代には、インフレが住宅ローンを軽くしてくれるという側面があったことは事実です。しかし、これからの数年間は、10年ほど前のデフレと同じ状況が続くものと思われます。
ローンを組むにあたっては、自分でその借金をコントロールできるかどうかにかかっています。現在の職は、景気が悪くなっても、あと10年ほどは間違いなく継続できるという見込みと、現在の収入でローンの支払いができることなど、厳しい条件をクリアできるならば活用すべきでしょう。
いずれにしても、自らの人生をリスクにさらし、乗り越えることが難しい状況に自分や家族を追い込まないために無借金に心がけることは重要な人生訓ともいえるのではないでしょうか。
井戸美枝いどみえ
井戸美枝事務所代表
神戸生まれ。関西大学社会学部卒業。 ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士・キャリアカウンセラーとして、相談、講演、執筆活動を行う。複雑なお金にかかわる動きを、かんたんに読み解く経済エッセイストと…
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