地中海に面する魅惑の国レバノン。中東の国々の中で最もヨーロッパの色合いを残し、首都ベイルートは中東のパリと称されるほどその美しさは際立ちます。そんな美しきレバノンでも歴史を振り返ると内戦での疲弊、隣国との衝突など戦争の傷跡が現在も色濃く残っています。中東地域の複雑な民族構成や宗教・宗派問題、さらには国境を巡った衝突とレバノンそのものが歴史に翻弄されてきました。そんなレバノンが急成長をみせている現場を目の当たりにしました。
中東湾岸諸国では、アラブ首長国連邦のドバイやアブダビ、カタールのドーハなど石油マネーでの巨額投資とインフラ整備は尋常ではない規模の成長をとげています。そして急成長のインフラ整備に必要となる現場の労働者は、諸外国からの出稼ぎ労働者が大部分をしめています。レバノンもその例に漏れず中東諸国からの労働者はもちろんアジア一帯からの出稼ぎ労働者が多数暮らしています。諸外国からの出稼ぎ労働者にとって決まった期間内に仕事を消化し、それに見合った対価を求めていく。祖国での仕事よりも世界規模での労働力を提供することで、祖国に残してきた家族を養っていく。海外での労働が認められ、家族を呼び寄せて中東湾岸諸国で暮らしている人たちも増えてきています。仕事の枠をどこに設定するのか、意識の持ち方によって生活の中身を変えていくことができると出稼ぎ労働者の方々は口にします。条件に合わない労働や不利な契約を結ばれることも実際にありながら、世界基準で労働者同士のネットワークやコミュニティーができあがってきている。まるで国際版出稼ぎ労働者組合のような存在力を発揮しつつあります。
レバノンでの建築ラッシュもこうした世界中から集まる現場労働者によって支えられています。次々とビルが完成していくベイルートの街並は中東のパリと称される面影を残しながら、近代化も同時に押し進める。21世紀の現在、いかなる仕事もその一国のなかだけで組み立てるのではなく、世界規模、コスモポリタンな枠組みに基準を置いているとベイルートの街並が実証していました。出稼ぎ労働とはグローバルビジネス最前線と言えるのかもしれません。国際化やグローバルという言葉は、アカデミックイメージの言語から、現実の暮らしに根付いた労働標準語となってきていると痛感しました。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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