アメリカ合衆国という存在。人口約3億人、経済規模は世界を牽引する立ち位置にあり、軍事力に関しては世界の警察を自称するほどの圧倒的な武力を誇る。そんな強いアメリカが変わりつつあります。
世界中での戦争の導火線を引き続けてきたアメリカであっても、近現代では国際戦争そのものをアメリカ本土で行ったことはありません。にもかかわらずアメリカ国民にとって決して忘れることができない事件が今から約14年前に発生しました。それは2001年9月11日にひき起された、ニューヨークワールドトレードセンター爆破事件。犠牲者は約3000人、負傷者は6000人以上。犯行の黒幕は国際テロ組織アルカイダの指導者であったオサマ・ビン・ラディン。このアメリカ史上最悪の悲劇の場所となったワールドトレードセンター跡地は現在、通称グラウンドゼロという名を刻み、ワンワールドトレードセンターとして復興をとげ、犠牲となった方々の慰霊の場所としてアメリカ合衆国の永遠の墓碑という存在になっています。
こうした悲しみに立たされたアメリカであっても未だ世界中に派兵されていく若きアメリカ軍兵士たちが存在している現実があります。彼らは戦場という極限の恐怖に身をふるわせながら、前線で任務をこなしていく。世界では戦いが続き、歴史上戦争がなくなったという時期は存在しません。アメリカでさえも戦争とは武力に対して武力で対応すべきなのか、外交で折衝するべきなのか、民間交流からの入り口を広げていくべきなのか、その答えを見つけ出せていません。私たちが暮らす21世紀は、国家という概念では処理できない環境が世界に広がり、戦争も移民問題も貧困も環境問題も旧来の枠組みでは解決することが不可能となっています。アメリカを筆頭に世界で力を持つ国々と混乱に立たされる国々との価値観や文明の衝突というものは未だに埋められずにいます。
世界が直面するこうした新しい問題の誕生によって、その隙間をつく過激派組織が勢力を拡大し、理論や責任を無視した行動を広げています。戦争が国益を得るという仮説には、時が経てば立つほど疑問符が突きつけられています。戦争を含め、歴史は繰り返すという言葉から誰も逃れることができない。そんな不安がいま世界を覆っていると感じています。「外国よりも自国の為に。」この言葉こそが変わりつつあるアメリカの象徴であると感じています。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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