「ピザパン化現象」
戦後、都心の土地の値段が上がり、環境も悪化して、まるでドーナツの真ん中に穴が空くように、人々は都心を離れて郊外へと移って行った。これを『ドーナツ化現象』と呼んだ。
ところがバブル崩壊後のこの10年間は、都心の地価が下がり、逆に郊外から都心部に居を移す人が増えた。人々がまるであんパンのあんのように真ん中に詰まっていくので、私はこの人口の都心回帰の流れを『あんパン化現象』と名付けた。
しかし、ここに来て都心の地価も下げ止まり、また都心を離れる傾向が強まっている。では、再ドーナツ化現象が起こるかというと、ここまで価値観が多様化すると、一世代前のように、収入に応じて都心から同心円状に居住エリアが決まって行くとは考えられない。
たとえ収入が多くなくとも、生活の利便性を中心に考える人は、高い賃料やローンを払っても、都心に住み続けるに違いない。逆に高額所得者であっても、ゆったりとした生活を求める人は、郊外に住むだろう。感性や趣味によって好まれるエリアが選択されるに違いない。
言わば、ピザパン上のあちらこちらに点在するサラミやトマトなど好きな具から食べるように、自分の価値観に従って住む場所を決める『ピザパン化現象』の様相を呈しているのだ。
「つくばエクスプレス」
平成17年の秋に、JR山手線の秋葉原駅を起点として茨城県のつくばまで、新しい鉄道、『つくばエクスプレス』(首都圏新都市鉄道株式会社)が開通する。東京・埼玉・千葉・茨城の一都三県を貫く全長約60キロを、わずか45分で結び、区間に20の駅ができる。都市再生機構が(旧・都市整備公団)この沿線に6つの街、『つくばエクスプレスタウン』を開発中で、現在、そのPRスーパーバイザーを拝命し、鋭意PRに努めている。
これらの街では、オンタイムの便利さとオフタイムの豊かさ、ファーストライフとスローライフが両立する生活が可能である。都心のマンションは便利だけれども、ペットは自由に飼えないし、本格的なガーデニングを楽しむこともできない。思い切りゴルフの素振りをすることもできないし、愛車をガレージで整備することもできない。
一方、都心を遠く離れた自然の中で一戸建て住宅に住んで遠距離通勤する人もいるが、通勤や買い物、コンサート鑑賞や観劇などの文化的生活、子どもの学校のことなどを考えると、やはりさまざまな不便さがある。
つまり、理想は都会と田舎の両方の生活ができることだ。
これからの都市の『ピザパン化』時代には、そんな新たな郊外居住、とかい+いなか=『とかいなか生活』が求められるのだ。
西川りゅうじんにしかわりゅうじん
マーケティングコンサルタント
商業開発研究所レゾン所長。1960年兵庫県出身。一橋大学経済学部(1984年)及び法学部(1986年)卒業。在学中に企画プロデュース事務所を起業。マーケティング戦略のエキスパートとして長きにわたり、産…
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