「組織はどうでもいい物事に対して、不釣り合いなほど重点を置く」というのがパーキンソンの凡俗法則。難しいことや重大なことに対してはこだわらず、流したり簡単に受け入れたりするのに、どうでもいいようなことに対しては関わろう、時間やパワーをかけようとする人が多いという傾向を言っています。
本質的で重要な組織の問題、「何をやるか」「どうやってやるか」という戦略や方針、多くの人に影響を与えるような決断などは、権限のある人やそれらを管轄する部署にお任せする。また、何だか難しそうに見えることは専門家や担当者にお任せする。一方で、どちらでも良いようなこと、分かりやすいことに対しては急に活き活きして口を出す人が増えるという景色を見たことのある人は多いでしょう。大事はスッと決まるが、些事には議論百出という状態です。
どっちでも良いなら一任すればいいのに、皆が口出しするので、その議論を調整・収束させるのに時間がかかってしまう。容易なことで1人でもできるのに、関わる人が必要以上に多いので、連絡や引継ぎやチェックといった業務が増大していく。これが「忙しい」という状況の正体。かけている時間やパワーと、その仕事・課題の大切さが不釣り合いになってしまっている状態です。
大事は偉い人にお任せで、些事にはその細部にまで関わってメンバーを振り回す上司というのは困りモノ。実務者にとってみれば、こういう類の忙しさは、自由や裁量がなくなって調整ばかりに時間をとられるわけですから、やる気も削がれます。大事に対して皆で関わり、些事は任せる(もちろん後でちゃんとチェック・フィードバックする)。不毛な忙しさから脱出するためには、重点を置き、時間をかけている仕事にそれなりの価値があるのかを考えてみなければなりません。
では、時間やパワーをかけるべき価値ある仕事とは何か。これについて参考になるのが、有名なアイゼンハワーの法則です。業務や課題を「重要か、重要ではないか」「緊急か、緊急ではないか」の2軸でマトリクスにして分類する方法で、次のように考えることができます。
重要かつ緊急の仕事 :必須
重要だが緊急ではない仕事:価値
重要ではないが緊急の仕事:錯覚
重要でなく緊急でない仕事:無駄
「必須」と「無駄」は分かりやすいですが、大切なのは「価値」と「錯覚」の違い。私たちはついつい納期の迫った仕事だけに集中し、それらを片付けることだけに終始してしまいがちです。ところが、それらの中には重要とは言えないようなものも多い。意味があるとは思えない会議や書類の作成・チェック、無計画や準備不足によるやり直しや修正などです。アイゼンハワーはそれらに忙殺され、それらに時間の多くを割いてしまっている状態を「錯覚」と呼んでいます。頑張っているのに報われない、進化しない仕事だからです。
急ぎではないが重要な仕事は何かを共有し、時間をかけて取り組むべきだというのがアイゼンハワーのメッセージ。なぜだか分からないが常に何となく忙しいという職場は、パーキンソンが指摘したような状況になっているかもしれません。これを脱するためには、アイゼンハワーのマトリクスを用いて、業務や課題を整理・俯瞰し、辞めること、変えるべきこと、時間をかけて取り組むべきこと、というように改善を進めなければなりません。
川口雅裕かわぐちまさひろ
NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)
皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…
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