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2016年02月19日

軍事基地からみる世界情勢

 イスラム過激派組織イスラム国が勢力を広げる中東のシリア国内で、アメリカ、ロシア双方が空軍基地の建設を進めているという情報があがっています。 外国の土地に突貫工事で軍事基地を建造する、そもそもそんなことが可能なのかといぶかる声もありますが、実際に前線を見ていくと外国の空軍部隊がその国の保有する空港を臨時に使用させてもらったり、仮設の軍用基地を建造してしまう例というものはいくつも存在します。軍事外交とは国益を守るための行動であり、各々の国にとってのメリットを確認できれば、軍事協定を結ぶという戦術は昔からありました。

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 アフガニスタン南部カンダハールに設営されたエアーフィールドと呼ばれる前線空軍基地。この地域はイスラム組織タリバーンの拠点があり、常に情勢が不安定な状態が続いていました。アフガニスタンには北大西洋条約機構(NATO)主導のISAF(国際治安復興支援部隊)が展開し、国内には複数の巨大軍事施設が築かれていました。この軍事拠点となる基地から米軍などの多国籍軍が最前線に飛び込んでいくというのが兵士たちのルーティーンでした。

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 実際に紛争地に設営される軍事基地とはいかなるものなのか?アメリカ軍に従軍取材を行ったおりに、その全貌を確認することができました。紛争地にある軍用基地の特徴は外国人部隊だけでなくその国の地元兵士や警官隊も訓練や実戦のために同じ場所で過ごすことが多く、まるで多国籍村のような雰囲気をもっていました。広大な土漠を更地にならし、フェンスで囲っていく。世界中から雇用された基地で働くための労働者、地元の臨時職員となる人たちが、キャンプ地の工事の担い手となって外観を整えていく。前線基地は戦闘や復興支援のためだけでなく、医療活動や娯楽施設、食堂など、軍事基地とはいえその用途は多岐にわたり様々な箇所で雇用提供が発生、軍用基地が地元の経済を刺激するという構図が確認できました。実際に戦闘に加わる兵士たちだけでなく、兵士をサポートする情報部隊や世界中から集まるメディア関係者の生活拠点など、そこに関わる人たちを見ていくと、人種も民族も宗教もすべてが絡み合った一つの国、多国籍国家のような存在になっていました。

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 世界情勢が激変する中、国家が自国のためだけに戦うことは少なくなってきています。周辺国との関わりや、国家間でリスクを分散したり、敵対する勢力への協力体制を整えたり、戦場に敷かれる軍事基地を見るだけで、世界がどのような危機に面しているかはっきりと捉えることができました。

渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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