イラクでのイスラム過激派組織イスラム国の攻撃が激化しています。イラク全土でイスラム国によるテロ攻撃が繰りかえされ、アメリカ軍有志連合による空爆や特殊部隊による地上戦の戦果はいまだ核心をつくものとはなっていません。イラクはイスラム教スンニ派(アラビア語で規範を意味する)とシーア派(預言者の血統に重きをおく党派)さらにイラク北部のクルド人組織の3つの枠組み構成で政権運営や衝突をくりかえしてきました。イラク現政権はシーア派寄りの指導者が多く、宗派や出身部族の違いで不平等な政権運営がなされていると国内外から非難されてきました。イラク政権の掲げる結束力をみても、いまだバランスを保つことができていません。
かつての中東の雄であるイラクが崩壊状態となっている一つの要因は、まさにイスラム過激派組織イスラム国の存在。イスラム国の最高指導者アブー・バクル・アル・バグダディーはイラク出身で、武闘派という一面だけでなく元イスラム法学者という学歴と知識を備えています。イラク戦争後の国内政変を利用して、あえてわかりやすいイスラム教スンニ派とシーア派の対立をあおることでイスラム国の存在を浸透させる戦術をとってきています。それに伴うように混乱するイラクに暮らす市民の間では血で血を拭う報復が繰り返されてきました。もともとイラクでは一つの街の中で様々な宗派、部族が共存する生活環境ができあがっていました。サダム・フセイン元大統領の絶対的な権力の中、恐怖政治でありながらも国力を強大にしてきた背景があります。中東のなかでも指導者としての役割を担ってきたのがイラクでありました。2003年のイラク戦争からサダム政権が崩壊。そこから権力を奪いあう宗派や部族に線引きされた内戦状態に陥っていきます。
イラクに暮らす一般家庭には、地域によって頻繁に“死の手紙”が届くといいます。封書の手紙の中には銃弾が入れられており、書面には期限付きの村からの転居を要求。内容に従わない場合には武装組織が家を襲撃し家族を殺害する。住民が疑心暗鬼になっており、外国人はもちろんイラク人であっても拘束される事件が続発。隣国シリア同様にイラクでも命がけの避難民が急増しています。アラブの衝突はアラブの国にしかわからないと語られる中、世界各国がイスラム組織を糾弾するだけでなく、テロに巻き込まれている各国の状況を確認し、地球規模の支援が求められています。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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