2003年3月19日、イラク戦争開戦前夜。アメリカのブッシュ元大統領がイラクに爆撃を開始すると全世界に宣言した。
それを受けてイラクの学校の先生と両親たちが「明日から戦争が始まります。」と、その旨を子供たちに伝えた。
戦争という日常に身をおくイラクの子供たちは、戦争がいかなるものなのか、よくわかっている。何度も戦争がこの国で起こり、目の前でたくさんの友人たちが亡くなっていった経験から、戦争の恐怖は言葉よりも先に体に染み付いている。戦争とは隣に住む友達が殺されること、そう理解しているようだった。
実際にイラク戦争が始まり、最初に犠牲になっていったのは子供たちだった。アメリカ側からイラク国内の民間人への攻撃は回避すると宣伝されていたが、現場取材で見えてきたのは爆弾の破片を受けた子供たちや瓦礫の下敷きになった母子というようにおびただしい数の幼子の犠牲者、そのあまりに生々しい現実であった。
こうした惨劇を避けることはできなかったのか? 実はイラクの子供たちは戦争が始まる前に、戦争回避を訴えてイラク全土で反戦活動行っていた。その活動は、子供たち自身が歌い踊ることだった。イラク国内にあるバベルの塔で有名なバビロン遺跡に世界中の芸術家を呼び、彼らのまえでイラク伝統舞踊や音楽を披露した。それを世界一斉配信してイラク攻撃をやめさせる手法をとったのだ。
これから戦争で殺されるかもしれない環境の中、子供たちは笑顔で歌い踊り、たくさんの外国人と話をした。招待された外国の芸術家たちもお互いの舞踊を披露し合って反戦芸術祭は終了した。イラクの子供たちは、自らの国旗を持って世界の方々とふれあえた芸術祭をたたえ、感謝した。
その後、予告通り戦争が始まった。この芸術祭に参加した笑顔の子供たちは爆撃の犠牲となっていった。
イラクの子供たちの行動に敬意をはらいたい。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
人権・福祉|人気記事 TOP5
「食」と介護 ~その一口で笑顔になれる~
小山朝子のコラム 「介護の現状~専門家の視点から」
イスラエル軍ガザ軍事侵攻
渡部陽一のコラム 「世界の戦場から平和を考える」
トランプ大統領によるパレスチナ和平調停案
渡部陽一のコラム 「世界の戦場から平和を考える」
世界の子供たちの水問題/蛇口をひねっても水はでない!
渡部陽一のコラム 「世界の戦場から平和を考える」
テロリストと戦う女の子
渡部陽一のコラム 「世界の戦場から平和を考える」
講演・セミナーの
ご相談は無料です。
業界21年、実績3万件の中で蓄積してきた
講演会のノウハウを丁寧にご案内いたします。
趣旨・目的、聴講対象者、希望講師や
講師のイメージなど、
お決まりの範囲で構いませんので、
お気軽にご連絡ください。