人には必ず一つや二つ劣等感やコンプレックスがあります。それは決して悪いことではありません。むしろ、劣等感やコンプレックスは、扱いようによっては大きなバネになります。相手と比べ卑下するのではなく、自分の成長の糧にできるのが心の力なのです。
かくいう私自身も以前はとてもコンプレックスの強い人間でした。三越に入った当時優秀な同期が180人もおりいつも比べ落ち込んでいました。うじうじと悩み続けていた私は、ある一つのことに気がつきました。
自分と周りとの違いは何か。それは「自分が何もしていない」ということでした。人を羨み、嫉妬し、自分の境遇を嘆き、落ち込む。いつのまにか肝心な問題を見失ってしまっていたのです。
人を羨んでる暇があったら、汗をかいて動き回ればいい。周囲と比べて目立った取り柄もない私が何をすれば良いのか。「人のやらないことをしよう」と決めました。
心がけたのは、抱えている仕事をなるべく早く片付けて、頼まれたことを何でもやるということでした。そうすると、次第に上司も目をかけてくれるようになり、色々の人から仕事を頼まれコミュニケーションがとれるようになってきました。そうすると少しずつ仕事が楽しくなってきたのです。
壁にぶつかり、自分の底の浅さを知り、悔しがることもあるでしょう。そんな時他者を批判したり、無気力になったりせず、その事実を受け止めそれをバネに自分を奮い立たせる。負の感情を無理に消し去ろうとしてもバランスが悪くなるだけです。明るい部分も暗い部分もあって良いのです。
サッカーの本田選手もあるインタビューでコンプレックスを受け入れその後の全てを変えるきっかけにすると答えていました。本田選手のようにその感情を健全な反骨心に変換し、自らを変え推し進める燃料にすることです。そう思うと劣等感も今を生かすための資源になります。そう心がけることで、自分を変えていくことができるのです。
上田比呂志うえだひろし
大人の寺子屋 縁かいな代表
大正時代創業の老舗料亭に生まれる。幼い頃より家業を手伝い、"おもてなし"という、日本文化のDNAを受け継いで育つ。1982年に大手デパート・三越に入社。同社の社内研修制度によりフロリダで開催されたウォ…
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