2016年7月1日、南アジアのバングラデシュ首都ダッカで発生した外国人襲撃事件。レストランで食事をしていた日本人やイタリア人がイスラム過激思想に染まった若者たちに殺害される事件が発生しました。この事件が発生する直前、世界中で同じく過激派組織によるテロ事件がトルコやアフガニスタン、マレーシア、タイなど世界中の国々で連鎖するように引き起こされていました。
バングラデシュでの襲撃事件の特徴は、諸外国の大使館が集中する高級住宅街グルシャン地区で外国人を意識的に狙った攻撃であったことです。また、襲撃によって犠牲者が増えればふえるほど世界中のメディアが現場状況を伝え、事件と実行犯である若者たち、そして過激派組織の存在力を示すことができるという流れがありました。こうしたプロパガンダ的にテロを牽引する手法は中東を拠点とするイスラム国が世界中で繰り返してきた常套手段であります。世界中の誰しもがテロへの嫌悪感と怒りを覚える中、なぜ世界中の若者たちが過激思想に傾倒していくのか?
事件が発生した国々で共通することは、貧困からくる生活・教育格差という問題、出身部族や所属するイスラム教の宗派によっての線引きが敷かれていること、各々の政権が一部の階級や組織に意識を向けた政策をとっていることなどが絡み合っていると指摘されています。
にもかかわらずバングラデシュでのテロ実行犯となった若者たちは、富裕層に属し高等教育を受けたエリートとも言える若者たちでした。彼らは貧困や差別という事件要因とは真逆にいる青年たちでもありました。バングラデシュの人たちはこう語っていました。「バングラデシュの家族慣習は、常に家族が近くに存在し、常にお互いの環境に触れ合っていることを大切にします。事件を引き起こした若者たちの家族の特徴は、家族という枠組みの中に若者たち自身が居場所を手にしていなかったこと、富裕層だからこその孤独、寂しさというものが背景にあるのではないか。そこを過激派組織によって利用された。ここバングラデシュだからこその犯行理由の一つと感じ取れる。」
実行犯となった若者たちの存在は、決してバングラデシュだけのテロ指針ではない。世界中の様々な国には若者たちを過激思想に惹付ける悲劇が存在している。いま、テロリストを生産する構造に世界が意識を向けていながらもテロという恐怖はどの国でおこっても不思議ではない。テロの端緒を抑え込む情報共有の可能性を信じたい。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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