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コラム スポーツ

2016年07月25日

頑張るのではなく、楽しむということ。

「水泳のレッスンで、体力を上げれば泳ぎが上手くなると言われました」
30代〜50代の方を対象に定期的に行っている水泳レッスンで、生徒さんに質問されたことがあった。

びっくりしたことに、その方は涙を目に浮かべていた。

私は、内心「えっ?そんなに辛いことだったの?」と思ってしまった。
よく考えたら、私たちアスリートのように体力に自信があり、スポーツ出のキャリアがある人とはモチベーションが異なることに、その時改めて気がついた。

きっとその方にとっては、体力がないことが1番心配なことだったに違いない。

つまり、人それぞれスポーツをする目的が異なり、このレッスンに来ようと思った経緯も違うことを理解する必要があると感じた。

また、この経験から、「頑張っている」「頑張る」ことが重要だと思われがちである、私たちを取り巻く環境について考えるきっかけになった。

引退をして、様々な仕事の中でマルチな能力がとても必要であると日々感じている。なぜなら、現代社会はひどく色んな感情や問題が混在し、多種多様が美徳だからだ。複雑な社会に揉まれた日本人は、「頑張る」ことに囚われすぎて、「楽しむ」ことが難しくなっているのではないか。

スポーツには大きく分けて、競技型スポーツと参加型スポーツがある。
所謂、アスリートと呼ばれる人が競技型スポーツで、楽しむスポーツをする人が参加型スポーツだ。

生徒さんの一件から、私は「頑張らないで頑張ろうよ」と大人の生徒さんには伝えている。あとは、「駄目な自分を探すのはやめて、出来た自分の1要素を少しずつ増やそうよ」とも話すことにしている。特に健康の目的でスポーツをしている方つまり、参加型スポーツの方には伝えるようにしている。それが科学的なエビデンスがあるわけではないが、スポーツすることは、気持ちいいことだと少しでも沢山の人に体験してくれたら、長くスポーツを続けてくれるのではないかと思っている。

出来ないことではなく、出来たことを増やす。

こんなことがモチベーションになるでは、ないだろうか。

アスリートだった時、頑張る事は当たり前のことだった。もちろん、ハイパフォーマンスの為には日本語でいう「頑張る」ことはとても大切なことだ。
しかも、オリンピックのような大きな目標に向かっているのだから、頑張り方が大変明確だった。今思うとなんて幸せな時間を過ごしていたのだろうと思う。

1つのことに命を懸けて頑張っていた時期が間違いなく、今の自分を作っている。しかし、これからは、スポーツを楽しむことを伝えていきたい。

頑張るから、楽しむへ。

見る、する、支える。
スポーツは深くその魅力は計り知れないのだ。

伊藤華英

伊藤華英

伊藤華英いとうはなえ

競泳オリンピアン(北京/ロンドン五輪 水泳女子日本代表)

べビースイミングから、水泳を始め、15歳で日本選手権に初出場。女子背泳ぎ選手として注目される。2008年日本選手権女子100m背泳ぎで日本記録を樹立。初めてオリンピック代表選手となる。その後、怪我によ…

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