アメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ氏が次期大統領への就任が決まりました。過激な言動やパフォーマンスによって、アメリカに埋もれた格差や差別に苦しむ声をすくい上げ、メディアや世論の掲げる予想を覆しました。
今回の大統領選挙によってアメリカ合衆国が持つイメージと現実のギャップに想像を超える根深さが存在していることが判明しました。その本質ともいえる本音と建前を操る隠れトランプ派と呼ばれる人たちがクローズアップされました。生活への失望を抱きながらも、表では決してトランプ支持の姿勢を見せない人たち。投票結果と世論調査に大きな開きがでたことは、世界の諸国はもちろん、アメリカ都市部に暮らす国民でさえもアメリカの抱える悩みに気づけなかった。イメージで描く“世界の警察”アメリカはもう存在していなかったことをトランプ氏から突き付けられました。
今後、世界情勢のうねりが深まる中、トランプ氏はこう宣言しています。「アメリカの国益が第一、外国に対しては全て公平に扱う。」
友好国であっても敵対国であってもアメリカの利害に一致する行動を共にできるものは受け入れる、そのかわりに反目する存在には徹底的に対峙する。こうした言動は、政治家というよりも豪腕ビジネスマンの思考が際立っている印象をうけます。実際には就任前までトランプ氏のパフォーマンスは続き、大統領となってからはビジネスマンとして培ったバランス感覚を発揮する可能性もあります。来年のトランプ新大統領がアメリカをどう導き、世界にいかように関わってくるのか、世界中の誰しもが不安とともにダイナミックな社会変革を期待している熱がうごめいています。
トランプ氏に呼応するように、世界中で過激な言動を前面に出してくるポピュリスト政治家の姿が目立ち始めています。欧州では複数の国々で極端な保守的な思想連携を唱える指導者が大統領選挙に挑んできています。アジアではフィリピンのドゥテルテ大統領が、法規をこえた治安維持を拡大させています。そして、こうしたリーダーは得てして国民から絶大な人気を手にしている背景も共通しています。世界の社会構造が変わっていく転換期に私たちは立たされています。この現実を認識することができるのか、来年は誰しもが情報の精査と判断力の責務を求められていく時代の幕開けとなるかもしれません。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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