前回に引き続き、現在ものすごい勢いで普及している「ツイッター」について。
今月は私のツイッター体験から感じたその魅力について書いてみたいと思います。
■「おしゃべり」ではなく、あくまでも「つぶやき」
ツイッター(twitter)とはもともと「小鳥などがチ、チ、とさえずる」という意味。
パソコンや、ケータイ、iPhoneで行うツイッターは、一般的に「つぶやき」と訳されています。「チャット」と言うと、誰か特定な人とのおしゃべり、と言うことになりますが、ツイッターは文字通り「つぶやき」ですから、これといった対象に向けずに、勝手に独り言をつぶやけばいいのです。
「新宿西口なう。あれ、カメラのさくらやが無い!ポイントカード使おうと思ったのに」
(※現在地を語るとき「なう」という言葉を使う。ツイッター用語のひとつ)。
こんな、どうでも良いようなことをつぶやくのもあり。運が良ければ、このつぶやきを見て興味を持った人がこんな風に、勝手に返信してくれることがあります。
「さくらやは先月で閉店です。ポイントを使うならここまで連絡すると良いかも」とのつぶやきとともに、本店のURLの短縮版を載せてくれる人がいたり。まるで無反応のこともありますが。
これが著名人となると、多くの人が、そのつぶやきに注目していて、ドンドン勝手に感想をつぶやき、それが、画面上にドンドンアップされていきます。
ツイッター界の女王ともいわれている歌手の広瀬香美さん、お友達のかの勝間和代さんが、蓮舫議員と「仕分け」についてネット上で「ツイッター会議」を行った時にも、多くの、目には見えない観衆が注目し、感想や意見を、ぶつける、と言うのではなく、各自が独り言のようにつぶやいていました。
■140文字の妙
「メールを出す!」というと、大事(おおごと)になる感じですが、ツイッターはあくまでも、「突っ込み」ではなく「つぶやき、独り言」で語るスタイルという「礼儀」が結構きちんと守られているので、「論争」とか「口げんか」というのは見たことがありません(あるのかもしれませんが)。ブログのように「炎上」という言葉もあまり耳にしません(あるのかもしれませんが)。
その理由は「140文字」という字数制限も関係している気がします。
理詰めで相手を攻撃するには字数が足りません。「ばーか!」「くそ野郎」「氏ね」とかいう、2チャンネル的捨て台詞は十分可能ですが、その手のつぶやきも、なぜか見ませんね。大抵、事実を報告する人がいて、それの何かに感じた人が、感想を述べたり、関連した事実を述べたり、さらなる新情報を加えてきたり、と言う形が一般的です。
梶原「名古屋で仕事を終えて新幹線で品川へまっしぐら。昼には、きしめんも、エビフリャーも、ひつまぶしも、暇つぶしも断って、7時に品川。焼き肉屋で合コンだ、うっひひひー」
適当なことを書いたとしますね。そうすると、いくつかのつぶやきがiPhoneの画面にあがってくることがあります。
○「合コンて、女子アナなんか来るのかなあ?(笑)僕はフジテレビのカトパンが好みです」
△「カトパンの最新情報書いておきます(ネット上の芸能ニュースをURL短縮で記す)」
●「品川の焼き肉と言えば、港南口の○○苑がお勧めです。もしまだ会場決めていないならどうぞ(グルナビ品川焼き肉特集のURLから、特定の店の情報を掲載)」
☆「品川と言えば、高輪口のから坂を5分ほど上った新高輪プリンスホテル近くのカレー屋さんが美味しいと聞いたことがあります。どなたかご存じですか?」
★「☆さん。そのお見せ麻布十番に移転しました。場所はこちら。味は変わりませんよ(URLでお店地図)
こんな風に、軽い好奇心、軽い親切、軽いお節介、軽い売り込み、が行き交うことになり、最終的には、合コンの話はどうでも良くなったりします。
「何じゃそれ?!どこが面白いんだ!愚にもつかない無駄話ことちょこちょこ言い合って。アホか、お前ら!」
確かに、おっさんがそう言いたくなる気持もよく分かります。でも友人との雑談なんてこんなモンでしょう。こんな雑談で何となく心がゆるゆるになる感じを、ネット上で、知らぬ者同士が交わしあえるのがツイッターの醍醐味のひとつです。
「品川」や「焼き肉」や「合コン」「カレー」というキーワードで「ゆるくつながる」のですが、「じゃあ、俺も参加させろよ」という、いきなり濃いつきあいに移行するということは、あまりないのではないでしょうか(これも私のたった数千回のつぶやき体験によるものですが)。
■梶原流・ツイッター活用法
さて、前書きが長くなりましたが、私の場合は、
1:140文字を使い切って、その中で自己表現を試みる。ミニエッセーの練習ですね。
2:この人面白いなあ、という人へのつぶやきで、軽くゆるいやりとりを楽しむ。
3:自分に向けられたつぶやきへの、軽くゆるい返し、
4:ほんの軽口、暇つぶし
5:時々、イベントや番組や、ブログや著作の宣伝
という5種類に分けて書いています。
とりわけ、140文字のつぶやきエッセーをひねり出すのは、なかなか楽しいものです。
140文字というと「短い」と感じる方もいるかもしれませんが、俳句の17文字、短歌の31文字に比べれば圧倒的に長い。声に出すと、25秒。テレビCMが15秒で多くの情報を伝えるのを考えれば、相当なことが言えます。
うれしい事、笑えること、心にしみること。140文字の作品としてチャレンジするひとときも悪くありません。
逆に、もやもやした、すっきりしない思い、不安、焦り、落ち込み、怒り。こういうネガティブな気持を整理するのに大変有効であるとも感じています。
ネガティブな感情は放っておくとドンドン増殖し、手に負えなくなるものです。何が自分をそんな気持にさせているのか?問題の本質はどこにあるのか?悩む自分を「140文字で綴る」ことで、客観的な第三者の目で自分をとらえ直すきっかけがつかめたりします。日本的心理療法、森田療法で使用する「日記療法」や、内観療法における、自分を見つめ直す営みに通じるのかもしれません。セルフカウンセリングの一手段として研究する若き心理学者も出て来そうです。
先日、新幹線全線ストップで、仕事先につけるかどうか、茫然自失、思考停止になった自分を取り戻すきっかけを作ってくれたのも、素直な気持をドンドンツイッターでつぶやく中で、自分の心の内を俯瞰出来たからだと思いました。
自分の心の安らぎを得るためと割り切るなら、目の前に展開される事実や、自らの心境を淡々と書き綴る。そこに未知の人が「大変ですね」「頑張ってますね」というつぶやきが乗っかってくる。ふと我に返るきっかけを与えてくれることもあります。
そこで、ツイッターってどうなのよ、の結論です。
「使い方次第ですが、なかなか良いものかもしれません。
今からでも遅くなんかないですよ」
あなたからのつぶやき、お待ちしてます。フォローミー!
■梶原しげるのツイッターはこちら:http://twitter.com/shigerukajiwara
梶原しげるかじわらしげる
フリーアナウンサー
1950年生まれ。神奈川県茅ケ崎出身、早稲田大学法学部卒。文化放送にアナウンサーとして入社。92年からフリーとなる。 バラエティーから報道まで数々の番組に出演し、49歳で東京成徳大学大学院 心理学研…
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