『ポッンと一軒の農家が建っているんだ。リンドウの花が庭一面に咲いていてね。開けっぱなしの縁側から明かりのついた茶の間で家族が食事をしているのが見える。まだ、食事に来ない子どもがいるんだろう。母親が、大きな声でその子の名前を呼ぶ声が聞こえる。
わたしゃね。今でもその情景をありありと思い出すことができる…庭一面に咲いたリンドウの花、あかあかと明かりのついた茶の間、にぎやかに食事をする家族たち、わたしはその時、それが本当の人間の生活ってもんじゃないかとふと、そう思ったら、急に涙が出てきちゃってね。』
これは、私が大好きな山田洋次監督の映画『男はつらいよ』の第八作にでてくる渥美清さんの一節です。
この灯火の下での家族という幸福の世界は、渥美さん演じる「ふうてんの寅さん」にとっては、あこがれの風景でもありました。
灯火の下には、家族全員が集まり食卓を囲んで賑やかな食事と団欒のなか、さまざまな会話と笑い声そして時には、喧嘩や涙があり、親子兄弟がみな見えない強い絆で結ばれていました。
今の社会は核家族が増え、家族それぞれが忙しくなりバラバラで、子どもの孤食も増えています。食卓を囲んで家族が食事をする風景は、今ではノスタルジーだと言う人が多くなってきましたが、これが昔は普通の生活でもあり幸せの原風景でもありました。
最近「巣ごもり」という言葉を、よく耳にします。これは、不況で懐が寒くなり節約の意味でも自宅での生活を重視する人が増えてきていることから、このことをどうやら「巣ごもり」というようです。最近、色々な言葉が出てきていますが、「巣ごもり」とは、面白い表現ですね。
この巣ごもりにより家での食事が増えたり、料理を作る機会が増えたという結果がでているようです。これは、社会が貧しく、ゆとりのない時代だからこそ、本当に大切な場所がどこなのかを実感するうえで、とても良い傾向だと思います。
しかし、巣ごもりをするにも、優しい時間をもてる居場所がなければ何も意味がありません。物欲の果てにある幸福ではなく、目の前にある素朴で堅実だが、心豊かなものに心から幸福を求めること、そしてその存在があることに寒い時代の今だからこそ、そのありがたさをしっかり実感することが必要なのではないかと思います。
お金で買えるものが幸せではなく、お金で買うことができないものが本当の幸せだと思います。本当の幸せは気がつかないだけで、すぐ傍にあるのかもしれませんね。
木々の芽も少しずつ膨らみはじめました。それぞれの幸せの原風景となる生きるうえでの土台をしっかり固めて、さあ~新学期!心豊かに大切な人との和を育みながら、お互いに歩みを進めていきましょう。
暖かい温もりのある春の足音が、それぞれの人生にも聞こえてきますよ。
春日美奈子かすがみなこ
フリージャーナリスト
國學院大學大学院法律研究科法律学専攻修士課程修了。報道畑25年の経験を生かし、少年院や教護院(現・児童自立支援施設)での実習を通し、常に現場の”今”や”生の声”を大切にして、少年問題に取り組んでいる。
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