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コラム 政治・経済

2010年04月23日

中国経済の勢いと上海万博

 北京オリンピックと並んで中国の高度経済成長を象徴するイベントとして語られてきた上海万博がいよいよ始まります。上海市とは永遠のライバル関係にある北京市がオリンピックを大成功させた後だけに、今回、上海市政府が感じるプレッシャーは並々ならぬものと想像されます。ご存知の通り、中国は「メンツ」を重んじる国。また、過去、国家主席を務めた江沢民、首相を務めた朱鎔基も上海市長経験者。上海に対する中央政府からの要求度、注目度の高さは他の地域とは比較になりません。そんな上海で行なわれる国際的イベントが失敗することなど考えられません。工事に遅れが出ているという情報が入ってきていますが、歴史に残る大舞台を華やかにオープンさせるために、関係者を総動員して完璧に仕上げてくるのでしょう。

 そんなことを考えながら3月29日から4月1日にかけて上海へ取材に出かけてきました。上海の街はさぞ万博ムードで盛り上がっているのだろうと期待していましたが、意外にも予想は外れました。街中に上海万博のキャラクター「海宝」(ハイバオ)の看板などはちらほら見かけますが、「いよいよ万博が始まるのだな」と実感するほどには、目に見えるものがありません。

 そんな思いで街を眺めていると、「上海、ずいぶんきれいになったでしょ」と上海人の友人が話しかけてきたので、意識して上海の街を半年ぶりにじっくり眺めてみると、たしかに街が一段ときれいになっていました。なぜかというと、これには仕掛けがありまして、上海市政府が市民に対してテレビ広告を使って毎日のようにマナー向上を呼びかけているのだそうです。例えば、「信号無視は外国人が見ていますよ」「ゴミのポイ捨てはいけません」「自動車の運転ルールを守りましょう」とそういった類のCMが繰り返し、繰り返し流されているのだそうです。これまで頑なに自分達のペースを守り続けてきた上海人も、さすがにそのしつこさにはまいったようで、その結果、上海の街はずいぶんお行儀がよくなったといいます。

 しかし、プラス効果ばかりではないようです。「そのような調子で毎日注意ばかりされていますので市民は万博に対して少ししらけ気味なんです」というのです。そうしたこともあって、「万博、楽しみでしょ」と質問しても、うーん、と上海人の友人は首を傾げるばかりで、街を挙げてのお祭りという感覚はいまのところはないというのです。

 2005年の愛知万博を振り返ると、開催前に関連イベントを行って公式キャラクターをあちこちに登場させたり、公式グッズを配ったり、人気歌手にイメージソングを歌わせたり、街に旗を飾ったりして盛り上げていました。上海万博にはそのような盛り上がりがないので、やはり共産主義国の万博は少し勝手が違うのかな、と考えましたが、今回に関してはもっと物理的な要因だそうです。

 「おそらく会場の工事の遅れを取り戻すのに必死で、街のイベントには手が回らないのが実情なのでしょう」というのは上海人の友人。

 そうは言っても「メンツ」と「人海戦術」で、開催前にはすべてが完璧にできあがっているのが中国。そうした中国特有のエネルギーが経済成長をさらに加速させ、中国を凄まじい勢いで前進させているのでしょう。

内田裕子

内田裕子

内田裕子うちだゆうこ

経済ジャーナリスト

大和証券勤務を経て、2000年に財部誠一事務所に移籍し、経済ジャーナリストの活動を始める。テレビ朝日系「サンデープロジェクト」の経済特集チームで取材活動後、BS日テレ「財部ビジネス研究所」で「百年企業…

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