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コラム 人権・福祉

2010年04月30日

「気づき」が仕事を楽しくする

眼の動きまで見ていますか?

 私の講演は、自宅で9年8カ月の間、祖母を介護した実体験に基づいています。当事者としてどう感じ、どう対応したかをリアルにお話しするため、講演後に意見や質問が多いことが特徴です。涙ながらにご自身の体験を話される方、不安を感じて質問をされる方もいます。
 
 一方、取材で訪れた介護現場のお話もしています。
 例えばこんな話です。神奈川県に住んでいる男性は、30代で筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、20年以上にわたって奥様の介護を受けておられました。ALSの方の場合、透明な文字盤を目で追って介助者とコミュケーションをはかるケースも多いのですが、このお宅の奥様は介護のベテランですから、まばたきの数と眼の動きで言葉を読みとるのです。このご夫婦の姿を目にして、口で気軽にコミュニケーションがとれる夫婦以上に、深い心の結びつきがあるのかもしれないと感じました。
 上記の例を話した後、医療職・介護職のあなたにこう問いかけます。「日常の業務中に、患者さんや利用者さんの眼の動きをみていますか、その人のまばたきの数を数えたことがありますか?」と。

 先日の講演の後、病院のスタッフから「本当は一人ひとりにゆっくり接したいんです。でも人手が足りなくてそれができない。そうした事情もわかってほしいです」との意見がありました。
 そうした実情があるのは否めません。しかし、忙しいからと眉を吊り上げて介助をしていたら、介護される人も怯えて表情が強ばります。介護される人の状態はする人の心身の状態を反映します。介護される人の笑顔は、介護する人の微笑みからもたされるものです。

日々の業務に自らやりがいを見い出す
 
 ある施設で働く看護師長がこう話していました。
「例えば入浴の介助の際、たんにお風呂に入ってもらうことだけを考えていたのでは、その仕事に喜びを見いだすことはできません。そのときに、体に異変がないか確認し、皮膚が赤くなっていたら床ずれにならないよう気をつけてケアを行うよう周囲のスタッフにも注意を促すことができます。このように気づく力を養うことで、ケアの仕事が楽しいと感じられるようになるのではないでしょうか」
 患者や利用者の方のその人のちょっとした変化に気づけるようになれば、日常の業務にも変化がうまれ、仕事にやりがいが見い出せるかもしれません。

「僕は患者さんから学んでいる」
 在宅医療を行うある医師が話していました。この気持ちを持ち続けられる医療・介護職の方が増えてほしいなと感じます。

小山朝子

小山朝子

小山朝子こやまあさこ

介護ジャーナリスト/介護福祉士

9年8カ月にわたり洋画家の祖母を介護。その経験から全国各地で講演し、執筆活動や各メディアにコメントする。介護のノウハウや介護現場の「今」をわかりやすく伝えており、「当事者と専門家、ふたつの立場からの説…

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