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コラム 人権・福祉

2017年04月20日

繰り返される戦争

 1991年1月、パパブッシュことジョージ・H・Wブッシュ大統領がクェートに侵攻したイラクに対して空爆を開始。湾岸戦争が勃発。2003年3月、今度はパパブッシュの息子であるジョージ・W・ブッシュ大統領が大量破壊兵器を保持している疑いでイラクを空爆しイラク戦争開戦。そして2017年4月、ドナルド・トランプ大統領がシリアに化学兵器使用への制裁という大義でミサイル爆撃を敢行。アメリカの空爆がシリアを軍事支援するロシアを刺激し、大国どうしによる衝突の可能性が現時点で高まっています。

戦闘車に乗る軍人囲まれる軍人

 イスラム教にある複数の宗派のなかで、シリアのアサド大統領はシーア派の分派であるアラウィー派を信仰。そのアサド政権を支援する国々にはイスラム教シーア派の雄であるイランやシリアの隣国レバノンを拠点とする同じくシーア派過激派組織ヒズボラが絡み合っており、各々が舵取りできる攻撃対象への報復にでることが想定されます。そのターゲットとなる最たる存在がイスラム教徒の敵として名指しされるイスラエルであります。トランプ大統領によるシリア空爆は、中東全域を再び代理戦争の最前線に突き落とすことになると容易に想定できます。

銃を持つ軍人オサマビンラディン

 わずか16年前の9・11ニューヨークワールドトレードセンター爆破テロ事件からアメリカはテロの黒幕であった国際テロ組織アルカイダの指導者オサマビンラディンを匿ったとしてアフガニスタンを空爆。アフガニスタン紛争に突入していきました。そのアフガニスタンは現在でも武装組織が台頭する治安悪化状態が続き、市民生活の不安と格差、貧困の戦いが続いています。過去のデータからも戦争は今そこにある危機を完全に断ち切ることはできないことをアメリカ合衆国自身が認識しています。空爆から負の連鎖が始まり報復合戦が続いていくことはアフガニスタンでもイラクでも同じでした。過激派組織イスラム国の誕生のきっかけもイラク戦争であったと認識されています。

道を歩く人の後姿義足をはめて物を売る人

 ここ数年のテロとの戦いと並行する形で国家対国家の戦争が再び繰り返されていく。もしかすると過激派組織にとっては都合の良い戦いとなるかもしれません。トランプ大統領が選挙戦の時から語っていた不介入主義は就任約3ヵ月で瓦解してしまいました。かつての中東戦争が再来となるのか。再び中東が列強の代理戦争の土俵に引き上げられる可能性が高まってきています。

渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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