先日、図書館で調べ物をしていたら、館内放送で、「別館ホールで講演会が間もなく始まる」というアナウンスがありました。
こういう場合、時間に余裕があれば必ず参加することにしています。
直接、自分に関係がない『育児相談』でも『最新ロボット技術発表会』でも『聖書研究会』でも、テーマは何でもいい。話し手が上質であれば、どんなテーマでも「面白い」ということを体験的に知っているからです。普段、興味・関心のないものにこそ、思わぬ掘り出し物があるものです。
今回はたまたま『遺言の書き方と相続問題』という、私ぐらいの年なら、まんざら無関係とは言えない、最初から興味を引かれるテーマにたまたま当たったというわけです。
とはいえ、聞きに来ているのは私より先輩の皆様方。60代から70代の、自分の切実な問題として聞きに来ている方が大半で、私のように館内放送でふらり立ち寄った人はあまりいません。
講師をお勤めになった弁護士さんの巧みな話しぶりもあいまって、90分はあっという間に過ぎ、若干の休憩をはさんで質問コーナーです。
前回、前々回と、このコラムで「どうしたら質問してもらえるか」について延々と述べたのがばかばかしくなるほど、あちこちから手が挙がり、会場でマイクを運ぶ係員は汗だくだくという状態です。
そこで、教訓。
聴衆が本当に切実に聞きたい話をすれば、いやというほど質問は来る!
講演終了後「何か質問は?」といって、気まずい沈黙の後、「ではありがとうございました」と降壇することもある私としては大いに勉強になる講演会でした。
講演の中身が具体的であればある程、質問も具体的になるものですね。
質問者―「遺言状は、どんな紙に書いたらいいのでしょうか?」
弁護士―「よく、和紙に筆で、とおっしゃる方がいるけれど、実は何でもいいんですよ。ごく普通の紙に黒のボールペンがいいですね。毛筆や万年筆は、むしろ字がにじんで見にくい場合がありますから。ただし、チラシ広告の裏に鉛筆で書いたものについて、単なる下書きではないかと問題になったケースがありますから、そこまでは崩さない。その程度の配慮で充分です」
質問者―「遺言は貸金庫に保管するのがいいと聞きましたがどうなんでしょうか?」
弁護士―「貸金庫だけはおやめになったほうがいいです。ご本人がなくなった時点で、銀行機能は貸金庫を含め、すべて使用不能となります。遺言状を貸金庫から出すだけで、相続の権利があると思われる利害関係者全員の印鑑、印鑑証明を集め、全員の同意がないと、遺言書が取り出せない。遺言書を出したくないと考える人が必ず出てくるので、ここでまずもめます(私の聞き取りが正確かどうか問題ですがおおよそ、このようなことをおっしゃった)」
質問者―「じゃあ、どこへ?」
弁護士―「それはですねえ…」
遺言状でこれですから、直接お金にかかわる「遺産相続問題」の質問になると、講演会での「質疑応答」というより「個人相談会」の様相を呈しはじめます。
質問者―「実の息子がなくなって3年。我が家では、現在、かねてより折り合いの悪い嫁と、それに輪をかけた性格の悪い孫たちと一緒に住んでおります。こんな連中に私の遺産の法定相続分が行くのかと思うと理不尽で死ぬに死ねません。だって先生、私が喜寿の祝いの時に嫁が何といったか知ってますか?」
・・・なーんて、こりゃあ、弁護士よりカウンセラーにじっくり話を聞いてもらった方がいいんじゃないか、という大混乱が起きかねない雰囲気さえ漂ってきます(これ、あくまでもイメージ例です)。
実際に弁護士が、
「その件に関しては、税理士さんに聞いた方が」
「それでしたら、地元の社会福祉協議会で」
「それはお医者様に」
「それは直接奥様に」と、答えざるを得ない質問も押し寄せる。
質問は多ければ多いほど良い、とは言えないという事実を知ることもできました。
混乱は避けたいものですが、こういう活発な発言が相次いだということは、主催者や講師の弁護士さんが聴衆のニーズをあらかじめしっかりリサーチし、それに的確に対応する知識と話す技術で臨んだからこそだと感心しました。
ふらり立ち寄った無責任な観客の私でさえ、大いに引きつけた講演会。
とても勉強になりました。こんな風に、人の話は聞いてみるものですね。
ところで「犬も歩けば棒に当たる」の意味には大きく分けて二つあります。
[1]物事をしようとするものはそれだけに災難に遭うことも多いものだ。
[2]何かやっているうちには、思いがけない幸運にあうこともあるものだ。
(日本国語大辞典)
お客様を犬に例えるのは甚だ失礼ですが、あえて言えば、上の2つ目の意味で、機会があったらためらわず(特に無料の場合は)立ち寄る。そうすれば、結構面白い話が聴けるかもしれないのです。
そんな皆様に喜んでいただこうと、私はせっせと、毎日、テーマ探し、情報収集を心掛けているつもりです。
万一、私の話を聞かされる羽目になったら、ぜひアンケート用紙に「よかった」、「つまらなかった」という風ではなく、「ここで笑っちゃった」、「ここがムカついた」、「ここは人に教えたいと思った」という具合に、具体的なご指摘をお願いしますね。
こういう貴重なご意見から、お客様のニーズにどこまでこたえられるかが勝負だと考えています。
皆様にお会いできる日を楽しみにしております!
梶原しげるかじわらしげる
フリーアナウンサー
1950年生まれ。神奈川県茅ケ崎出身、早稲田大学法学部卒。文化放送にアナウンサーとして入社。92年からフリーとなる。 バラエティーから報道まで数々の番組に出演し、49歳で東京成徳大学大学院 心理学研…
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