上司として、「部下が会社主催の研修に行ってきた」「部下が自ら何かを学んでいる」ということを知っているのは、当たり前ですが、そこで学んだことを仕事に活用させようとする人は非常に少ないのが実際です。研修に行ったことは知っていて、何を学んだのかも把握しているが、それを「やってみろ」と促すことはありません。
それなら、まだましで、一部には、部下育成を自分のミッションと自覚していないような上司がいます。そういう人にとって、部下は部署の目標達成や業務遂行にまい進してくれればよいだけの存在なので、研修や勉強に取り組む姿は、せっかく労働できる時間を他に振り向けているようにしか見えず、遊んでいるのと同じ位置づけになります。「勉強しているヒマがあったら働け」と言うし、会社が企画する研修は、自分が使える労働力を1日会社に奪われたようにしか感じません。そういう上司の職場では、研修に参加する人が、席を空けることを皆に謝っているようなことさえあります。
また、上司には「研修やセミナーで教えてくれる”理屈”が、実務で役立つことはない。」という確固たる信念をお持ちの人がいます。部分的にはその通りで、理屈は確かに再現性が低い。現場ごとに固有の事情があるので、現場ごとの事情に基づいて具体的に指導するほうが、すぐに再現することが可能です。だから、「”理屈”よりも、自分が体で覚えてきたことを、ちゃんと教えてやろう。」といった自信をお持ちです。
さて、このような上司がいる職場、会社では何が起こるでしょうか?
そうです。ガラパゴス化が起こります。孤立したガラパゴス諸島の生態系や動植物のように独自の進化は遂げますが、いつの間にか外界、つまり顧客や市場、同業他社を含むビジネス標準からかけ離れた状態になっていきます。「携帯電話」がこの例でよく引かれますが、上のような内向きで、これまでとの連続性を重視しすぎる職場でも同じ。新しい知識や技術を取り入れない、学んだことを実践させない職場では、人材も技術や知識もガラパゴス化が避けられません。
上司は、今役に立っている知識や効果的な技術が陳腐化するのに備えて、部下に何を学ばせ、それを組織としてどう共有し、蓄積していくかを考えなければなりません。学ぶことを奨励し、それを仕事で実践させることは、外部環境との最適化を図るために不可欠で、研修はその格好の機会なのです。
川口雅裕かわぐちまさひろ
NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)
皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…
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