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2013年03月25日

人事異動の成否は何で決まるか

4月は人事異動の季節。新聞では3月に入ると、多くの企業の人事が発表されるようになりますので、私も毎朝、知り合いがいる会社が掲載されているかどうかチェックをしています。そんな他人事ならいいのですが、この原稿が掲載される頃には、ほぼ4月の人事異動の内示や発表が済んでいるでしょうから、対象となった人にとっては、悲喜こもごもといった時期かもしれません。私も、会社勤めをしていた頃、人事部から広報部へ異動を命じられた時は驚きました。まだまだ人事部でやりたいことがあり、取り組んで間もないプロジェクトも抱えていたので、まさに青天の霹靂…。思わず、社長に「そんなアホな・・・」と言ってしまったことを覚えています。(人事課長として人事異動の案を社長と一緒に練っていた際に、突然、「お前はココ」と広報ポストを指差されたのですから・・・)しかし今振り返ると、あの異動は私のキャリアにとって非常に有意義なものでした。

人事は社内に徹底して向き合うことが求められますが、広報は外向けの活動・コミュニケーションがその使命です。人事マンには、労働関連法や人事制度はもちろん、労務管理にも研修や採用にもマニアックとも言える知識が必要ですが、広報マンにとっては、そんな知識や理論による武装は大して重要ではなく、その時々の状況にマッチした言動を選択するセンスのようなものの方が大切です。また、人事には採用費・研修費・システム経費など大きな予算を持って発注する場面がありますが、広報は(企業広告をやるのでなければ)、記者やアナリスト達と、金銭関係ではなく丸腰で付き合います。これらの違いは、11年という長い間、人事しか知らなかった私には新鮮で、刺激的でありましたし、自分の強みと弱みをはっきりと自覚することができました。

この異動が、会社にとっても私にとっても良かった(と思っているのですが・・・)のは、着任した日の午前中、上司となる社長から明確なメッセージがあったからだと思います。社長の口から広報という機能に対する思い、会社が置かれている環境とこれから広報に期待したいこと、私個人に対する見方(評価)と、成長してもらいたいポイントなどをじっくりと聴くことができ、この場で不明な点や意見の相違についてもすり合わせを行いました。この面談の内容に基づいて、私は周囲の期待に沿い、同時に自分の強みを活かしたり、至らぬ点を意識したりしながら、仕事に臨むことができたと思うわけです。

私の経験からだけではありませんが、人事異動の成否は「本人の強みの自覚」と「周囲からの期待の把握」の度合いで決まるように感じます。図にしてみれば、以下のようになります。

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異動後に組織に「貢献」できるかどうかは、自分の強みをしっかり自覚すると共に、周囲の期待もちゃんと把握しているからです。

強みを自覚していても、周囲の期待とズレてしまっては、「独善」的な仕事になってしまいます。周囲の期待を分かっていたら「適応」はするでしょうが、自らの強みの自覚が不十分だと、力を発揮して貢献するのは難しく、周囲に合わせるだけ、その部署に染まるだけになってしまうかもしれません。また、自分の強みも周囲の期待も知らないようでは、部署の仲間も自分も「困惑」するばかりでしょうから、人事異動は失敗に終わります。

人事異動は、個々のレベルアップ、組織の活性化、中期的な生産性の向上という観点から、必要かつ効果的な策です。それが意図通りにうまくいくよう、異動した部署でのスタートに当たって、本人がしっかりとその強みを自覚すると共に、受け入れた部署の上司や同僚は当人への期待を分かりやすく伝えなければなりません。

川口雅裕

川口雅裕

川口雅裕かわぐちまさひろ

NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)

皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…

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