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2013年04月25日

成果を出す人の思考

何でも具体的、個別的に考えようとする人がいます。指示を受けるときも、人に指示をする際も具体的じゃないとダメ。何をすべきか詳しく共有できないようでは、うまくはいかず、具体的にするのが何より大切だと思っています。一面ではその通りなのですが、欠点は、一般論や原理原則を軽視していること。こういう場合はこうする、こう来たらこう受ける、というのはよく知っているのですが、イレギュラーなケースに弱くなりがち。多様なケースや要望と立場・環境の変化に対応しながら成果を上げ続けるには、汎用性の高いコツや勘所を導く抽象的な思考も必要です。

何でもデータや結果に基づいて考えようとする人がいます。他部署や他社の事例、一般の調査結果など出来る限りの情報を集め、それらのいずれとも矛盾しないものを正解とし、実行するのが良いと思っています。もちろんそれも立派な考え方ですが、ブレークスルーが起こりにくく、安全重視の凡庸な結論になりがちなのが問題です。一つの事象から導かれた仮説や、一人の顧客の声から想像できるニーズをもとに、「であれば、正解は…なのではないか」と展開する思考が出来なければ、差別化されたユニークな発想は生まれません。前例の繰り返しや個別対応に忙殺される状況から脱して、大きな成果を出すためには、帰納的に思考するだけではなく、演繹的な思考も必要なのです。

何でも筋道を立てて考えようとする人がいます。因果関係が明確でないことを嫌がり、論理的で間違いのない結論を導こうとします。確かに大切な思考ではありますが、その結論が多くの人の直感と一致していた場合には、それを補完・証明したことにしかなりませんから、有効な仕事とは言えません。また、論理的に問題のない内容であっても、それが社内や顧客の心を動かさないものなら、成果にはつながらないでしょう。最終的には論理的にまとめる必要はあるにしても、その前の段階では、たくさんのアイデアを出し尽くし、視点を変えて更にアイデアを生もうとするプロセスが欠かせません。成果を上げる人は、論理的にまとめる前に、思考を拡散させる習慣を持っています。

具体的に、帰納的に考え、論理的にまとめるのは大切ですが、それでビジネスや社会の複雑な状況における適切な対応が分かるわけではありません。学校のテスト問題には、正解を導くための要素が必ず入っていますし、その要素は他に影響を受けない前提なので、誰がいつ解いても正解は同じになりますが、現実社会では、そうではないからです。厳密に言えば、正解というのもありません。うまくいったとしても、もっと良い方法があったかもしれないからです。そして、このような、過去の明らかな事象に基づく論理的正しさに偏った組織からは、イノベーションは生まれないでしょう。過去からの連続性の延長に、イノベーションがあるとは思えないからです。

大切なのは、抽象的な発言、根拠に乏しい意見、思いつきの域を出ないような主張を、排除しないこと。多くの組織では、会議や業務上の会話で、「具体的には?」「根拠は?」「データは?」「それは確実なのか?」といった反応をしがちです。しかしそれを続けていると、皆の思考が偏るようになり、発言が委縮し、結論が常に平凡なものになってしまいます。それでは、仕事にも組織にも変化は起こらず、成果も上がりませんし、人も成長しにくくなるでしょう。今、企業組織には、「まとまってなくてもいいから、言ってみて。」「思いつきで構わないから、何かアイデアはない?」と促すような姿勢、素朴で荒削りな発言を大切にする態度が求められているのです。

川口雅裕

川口雅裕

川口雅裕かわぐちまさひろ

NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)

皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…

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