飲食店などでの振る舞いを見ていると、その人がどのような上司であるかが、おおよそ分かるような気がします。先日、行きつけの店の店主に「困ったお客、嫌なお客とは?」と聞いてみたのですが、それはまさに、困った上司に共通するものがありました。
周囲の客や店に対する配慮に欠ける人がいます。静かな店内で、大声で会話や爆笑をする。混んでいて店の人が忙しそうにしているのに話しかけたり、「○○を抜いて」「ちょっと固めで」「・・を、こんな風にしてほしい」といった、時間のかかるややこしい注文をしたりする。他の客が入ってきたとき、席を代わったり詰めたりすれば座れるのに、何もしようとしない。俺は客だ、カネを払っているという意識がどこかにあるのでしょうか。
そういう人は、職場の状況、個々の仕事の動向に配慮することなく、自分勝手な指示指導を繰り返しているのではないかと想像します。残念ながらそんな、俺は上司だ、部下の評価は自分が握っている、自分の言うように行動しろと考えているような上司についていく部下はいません。
店の仕事、店の人の努力を軽視する人がいます。丁寧に作られたものを、一気にかき込むように平らげる。どこに工夫が凝らしてあるかに気づかない。店の人が持っている知識を聴くよりも、自分の浅はかな知識をひけらかす、知ったかぶる。(往々にして、それが間違っていたりするが、誰もそれを指摘できない。)『おあいそ』の語源も意味合いも知らずに使っていることを、恥ずかしいとも思わない。店の勧める食し方に従わず、自分流にこだわる、自分流を押し付ける。自分は詳しい、通であるとアピールしたいのかもしれませんが、実は鈍感で、店の人の心情を傷つけていることを理解できていないわけです。
部下の努力や工夫を軽視する、気づかない上司がいます。部下が頑張ってやったことを流してしまう、自分ならもっとうまくできると自慢する、実務の大変さをわからずに、浅い知識や理屈だけ言って否定する。そういう上司には、誰もついていこうとは思いません。
店の人を喜ばせられない、店の人の気持ちを乗せられない人がいます。他の同じような店をほめまくる。店の人に対して自分の話、特に自慢話ばかりを聞かせている。店や店の人に関心がなく、質問しない、聴かない。人の自慢話ばかり聞かされる立場を想像してみれば、分かりそうなものですが、あれをちゃんと聞かないといけない店の人が可哀想に思えてくることがあります。店の大将も、「仕込みも調理も接遇もまったく苦になりませんが、一日中、自慢話を聞かされたときは、本当に疲れます」と言っていました。
部下に対して常に一方的なコミュニケーションを行い、自分の話ばかりしている上司は、部下の気分をのせ、やる気にさせることはできません。的確に質問ができず、話に耳を傾けてくれない、自慢話や説教ばかり垂れてくる上司に、部下は大いに疲れ果ててしまうでしょう。
そもそも、職場だけ、上司という立場になったときだけ上手に振舞える人などいません。上司としての振る舞いは、日ごろの言動が現れるものであり、飲食店での言動をみればどのような上司かは、だいたい分かります。その意味で、日ごろの言動を見直すことも、上司としてのありようを正す効果的なアプローチではないでしょうか。
川口雅裕かわぐちまさひろ
NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)
皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…
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