新しい商品を発売しようとするとき、企業は通常、どのような行動をとるでしょうか。まずは、既顧客やお得意様から当たってみるでしょう。次に、彼らに紹介を依頼したり、リストにある以前アプローチした人に改めてご案内をしたりします。全く見ず知らずの人に営業するよりも既に関係が出来ているので、買っていただける確率が高く、かつ営業コストも安いので当然のことです。「まず広告を打ってみよう」とはなりません。
同じ理屈で、新年度の新卒採用のスタートは内定者や社員の紹介、知り合いの学生や学生団体などから当たるのは当然です。採用広告を出すよりもコストは安く、かつ営業と同じく歩留まりも高くなります。ところが、そんな活動はまったくと言っていいほど行わず、まず採用広告を出して、学生のエントリーをいっぱい集めようとする会社が多いのは不思議なことです。
営業で、見込み顧客に最初に商品を説明するとき、何十人も何百人も集めて、通り一遍の説明を行うでしょうか。何もしなくても飛ぶように売れる商品か、群集心理を利用した作戦でもない限り、それでは成果が出ません。新卒採用の説明会において大量動員型が結局は成果に結びつかない、一方的な長時間の会社説明が次の接触につながらないのは、これと同じです。成果が出る営業は、出来れば一人ひとり、営業マンの人数が足りない場合も出来る限り少人数で、それもお客様との双方向のコミュニケーションがある形で行なっているはずです。新卒採用も、これにならわねばなりません。
営業で、「ご契約は来月以降でないと受け付けられません」と言って買う気満々のお客様を待たせることはありません。また、「先月までで、ご契約は終了いたしました。」といって折角のお客様の申し出を断ることもありません。新卒採用では面接・選考の日程はだいたいの場合、企業の都合で決められてしまっていて、学生がそれに合わせるのが普通になっていますが、これによって入社意欲が高まっている学生のテンションを下げてしまったり、あるいは何回も会えば可能性が出てくる学生を逃がしてしまったりしています。
お客様の購入意欲の盛り上がりは人それぞれであって、その人に合わせて段取りやスケジュールが決まるのは当たり前のことです。本気で採用したいのであれば、新卒採用においても、学生それぞれに合わせて段取りやスケジュールを変えるべきでしょう。
営業活動が成功したか否かを判断する際、コストがどれくらいかかったかは重要なポイントです。同じ売上を上げても、少ないコストでそれを達成した方が評価されるのと同じで、新卒採用でも採用費、1人当たりいくらをかけて採用するか、採用できたかを指標とするのは企業として当然のことです。
「人にはカネをかけないといけない」「カネをかけた方がいい人材が採れる」などと誰かに言われているのか、他部署と比べられることがないからか、予算があるから使ってしまえ・・なのか、多くの場合、人手が足らないことを理由にコスト感覚が感じられない採用企画・活動を見かけますが、人事部の傲慢と言うしかありません。
以上のように、採用活動をより効果的にするには「営業ならどうするか」という視点で考えることが重要です。
川口雅裕かわぐちまさひろ
NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)
皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…
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