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2010年11月25日

人が育つ職場環境とは。~「見える学力、見えない学力」(岸本裕史著)から~

百マス計算で有名な陰山英男さんの師匠的存在なのだそうですが、岸本裕史という方の著書で1981年の出版以来69版を重ねている「見える学力、見えない学力」には、人材育成に関するエッセンスが多く詰まっています。本の主題はおおむね小学生までの子供の教育で、対象とする読者は子を持つ親ではあるのですが、企業の人材育成にも十分に応用が可能な内容と言えるでしょう。

同書の一節に、”出来る子供”は次のような環境にあるとあります。

・学校での成功なり課題の達成を、わがこと以上に喜んでくれる親によって育まれている。たまさか、不首尾な出来であったり、とんだ失策をやらかしても、怒鳴りつけるのではなく、いたわりや慰めのこもった激励を与えている。

・家庭はくつろいだ雰囲気で、子供にとって居心地のよい所である。両親の気分がすぐれないときでも、機嫌の悪い時でも、忙しい時でも、じゃけんにふるまうことはない。自由で温かい家庭は、子供の知的能力をすくすくと育てる上で、最も大切な土壌である。

・自由な雰囲気の家庭と抑圧的な家庭の一番の違いのいちばん目立つ差は、親子の間に交わされる会話の量と質。抑圧的な家庭では、親が一方的に子供に話をする。自由な雰囲気の家庭では、親子の間で知的な内容を含めての対話がしばしば交わされている。

“出来る子供”にするには、「(1)一緒に喜んであげる。いたわりのある激励を行う」「(2)居心地の良い家庭である。自由で温かい雰囲気。」「(3)一方的でなく、良質で双方向の会話がたくさんある。」という環境を親が創ってあげることが重要であると言っておられる訳ですが、親を上司と、家庭を職場と読み替えれば、見事に、特に若手社員を育成する際のポイントを表わしていると感じます。

解釈を含めて、企業における人材育成に読み替えると、一つ目は、部下の成功を一緒に喜び、失敗に対してはいたわりある激励を行うこと。とは言っても、取り組んだ課題の難易度や仕事のプロセスをよく知らないことが部下にバレてしまえば、ワザとらしいご機嫌伺いにしか感じられないでしょうから、適切な難易度の目標を上司と部下が合意し、その過程でしっかりと支援やアドバイスがあって初めて、一緒に喜ぶ資格があり、激励に説得力が生まれるものだと思います。

二つ目は、部下にとって居心地の良い職場、自由で温かい雰囲気をつくること。と言っても、単に緩んだムードにする、もしくは放置するから勝手気ままに振舞って構わないというのでは、チームワークもリーダーシップもあったものではなく、全体のパフォーマンスが低下し、しだいに居心地も雰囲気も悪くなってきます。自分の強みや得意分野が周囲に認知され、自分の役割が明確でそれに周囲が期待してくれているから、職場での居心地が良くなるわけであり、互いに信頼しているから、そして協調・支援の関係があるから自由で暖かい雰囲気が生まれてきます。

最後は、職場に一方的でなく、良質で双方向の会話がたくさんあること。これは、「良質で」がキーワードです。一方的でなく双方向にすることは、いろいろと聞いてやれば良いのですから、そう難しくはありません。上司と部下、または職場における良質なコミュニケーションとは、反省や気づきをもとに体系化を促すようなフィードバック、改善や成果に向けた建設的な内容、さらに未来や理想を共有するような前向きな内容、などを含むものでなければなりません。

川口雅裕

川口雅裕

川口雅裕かわぐちまさひろ

NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)

皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…

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