日本でも海外でも、「日々、良く学び、良く働くビジネスパーソン」を見かけます。自分を高める目的でものを学び、それをビジネスに反映させていこうとする人は、来る日も来る日も「自分磨き」に励み、よりクオリティーの高いビジネスをしていこうと試みるものです。
今回は、皆さんと一緒に、「人間がものを学ぶ上で求められる<重要ポイント>」について考えてみたいと思います。
言うまでもなく、どんな分野においても、「その分野において専門性を極めるための学びの道を歩む」というそのプロセスは決して簡単なものではありません。特定分野においてしっかりと専門性を深め、真のプロフェッショナルとなっていくためには、歩む過程において直面する幾多もの困難(鉄の壁)を克服していかなければなりません。
しかし、人間は、時として、実に愚かな考え方をするものです。「自分には限られた知識しかない」という事実は自分自身が一番良く知っている事実であるはずなのに、人間は、時として、「自分は何でも知っている」というような”錯覚”に陥ることがあります。
この話を具体的に進めていくならば、以下のようになります。そもそも、他者に対して、「自分は何でも知っている」ということを簡単に言う人は、その本人自身、
1)「実は、何も知らない」
2)「知ってはいるが、実は、そこそこ知っているだけのこと」
という”確かな証”となってしまいます。
古代ギリシア時代における偉大な哲学者、ソクラテス(Sokrates, 470-399 B.C.)は、「知」を愛し、「知」を求めることに自分の人生を託しました。古代ギリシア語においては、「哲学」(philosophia)という言葉は、「知」(sophia)を「愛する」(philein)という意味を成します。この、「知を愛すること」、即ち、「愛知」は、ソクラテスによって確立されたものであると伝えられています。
ソクラテスは、「助産術」と呼ばれる問答方式によって、周囲のソフィストたちに、本当の「知」を伝えることにエネルギーを注ぎました。ところが、ソフィストたちは、ソクラテスによって”自身の無知”を説かれると、ソクラテスをひどく嫌ったのでした。
当時のギリシアでは、ソフィストの中には、少しばかりの知識があるだけで、さぞ自分が偉い人物であるかのような錯覚に陥る者がいました。当時、ギリシアでは、「学問をする」という行為は贅沢な行為であったので、一般の人々は、”学問をする人”に敬意を払っていたのです。
しかし、ソフィストといえども、決して万能な存在者ではありません。ある程度まで学問を修めたとしても、その知識は、決して万能なものではありません。ソクラテスは、「自分は何でも知っている」と自負する者は、実は「何も知らない者」であると説きました。そして、ソクラテスは、「人間は、自らをそう思っている間は、決して”真の知”に到達することはできない」と唱えたのです。
今、ソクラテスの「無知の知」を通して皆さんに考えていただきたい問題は、「”自分は本当は何も知らない”という自分自身の無知に気づくことが、”真の知”への道のりである」ということです。
この、「無知の知」の考え方は、古代ギリシア時代において展開された考え方ではありますが、その時代から二千数百年経った現代社会においても、この考え方を超えられない人間が多いというのが実情です。
今、私たち現代人に求められることは、古代ギリシア時代において展開されたソクラテスの「無知の知」の意味をしっかりと捉え、「常に”謙虚な姿勢”で、自分をピカピカに磨いていく」ということだと私は考えます。「謙虚な姿勢でものを学ぶ」、一見すると簡単そうに感じますが、私たちは、日々の生活において、少し油断すると、このことを忘れがちになってしまいます。
生井利幸なまいとしゆき
生井利幸事務所代表
「ビジネス力」は、決して仕事における業務処理能力のみを指すわけではありません。ビジネス力は、”自己表現力”であり、”人間関係力”そのものです。いい結果を出すビジネスパーソンになるためには、「自分自身を…
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