前回はDXの3つの段階について書きましたが、概念だけではわかりにくいと思いますので、今回は具体的な例で説明しましょう。わかりやすくするために、非常にシンプルな例にしてあります。
例えばある会社で、10人の営業マンが毎日客先まわりをして、その日の最後に日報を書いて提出し、それをアシスタントが1枚のレポートにまとめて上司に提出する、という業務があるとします。この業務はコンピュータを導入する以前からやっていた業務です。
①コンピュータが無かった頃(デジタル化前)は、営業マンは一日の終りに会社に戻り、紙に日報を書いてアシスタントに渡します。アシスタントはそれをレポート用の書式に書き写し、上司に提出します。
そこへコンピュータが導入されました。(ここでは、いきなり一人一台導入されたとしましょう)第1段階は「既存の業務をコンピュータで効率化する」段階でしたね。
②コンピュータが導入されると、営業マンは日報をワープロで打ち、それを電子メールでアシスタントに送ることができるようになりました。アシスタントはそれをコピペしてレポートを作成することができます。営業マンの負担はあまり変わりません(ワープロ打てない人は大変そうですが)が、アシスタントの負担は激減しました。
と、ここまでが第1段階です。コンピュータの導入によって業務が改善されたように見えますが、業務プロセスは全然変わっていません。コンピュータが無い頃のやり方をそのまま踏襲し、中の作業がちょっと便利になっただけです。それでも導入によってタイプミスもなくなり、アシスタントの残業も減るなど、効果は出ています。
さて、その後クラウド時代になり、皆がスマホを持つようになりました。第2段階は「クラウドやスマホなどの先進技術を使って既存の業務をさらに改善してより効率化し、使いやすくする」段階です。
③スマホが普及して、営業マンは外出先からでも日報をメールで送れるようになりました。いちいち会社に戻る必要がなく、負担はさらに軽減されました。
新技術によってさらに便利になりましたね。これが第2段階です。
しかし、これではまだ「変革」ではありません。第3段階の「最先端のデジタル技術を使って既存の業務プロセスや組織を根本から見直し、変革する」とは、どういうことなのでしょうか。
ここで、そもそも何のために日報を出させていたのかということに立ち返ってみましょう。上司は、営業マンがサボらずに客先を回っているかどうかを知りたいだけなのかも知れません。あるいは、客先で何か問題が起きていないかをチェックしたいのかも知れません。
そうであれば、例えば営業マンが持っているスマホのGPS情報を自動的に吸い上げて上司の画面上に表示したり、一日の移動の軌跡を誰もが見られるようにすれば、営業マンの行動は自動的に共有され、日報を作成する必要は無くなるかも知れません。
あるいは、客先で問題があったときにはLINEなどのツールを使って情報を共有するということにしておけば良いかも知れません。それどころか、最新のAIを使えば、営業マンと顧客や同僚とのメールのやりとりを分析し、問題が疑われる場合には自動で上司に警告メールを送ることもできるでしょう。そうすれば、営業マンは営業活動以外に時間をとられることは無くなり、負担は減り、働き方改革に繋がり、他の仕事に時間を使うことができます。
情報の共有はスピーディになり、上司は毎日日報を読む必要は無くなり、問題があるときにだけ通知が来るようになります。ビジネススピードは上がり、売り上げも上がるでしょう。これがデジタル「変革」のイメージです。
ここではごく単純化して例を挙げましたが、さまざまな業務で、これと似たようなことが起こっているはずです。DXとはそれらを「デジタルの眼」で見直し、無駄を排除し、効率を上げるためにはどうしたら良いかを考え、そのためのシステムを構築することなのです。
大越章司おおこししょうじ
株式会社アプライド・マーケティング 代表取締役
外資系/国産、ハードウェア/ソフトウェアと、幅広い業種/技術分野で営業/マーケティングを経験。現在は独立してIT企業のマーケティングをお手伝いしています。 様々な業種/技術を経験しているため、IT技…
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