先月、「クラウドとはなにか」についておさらいをするコラムを書きました。結果としてはクラウドのメリットを強調するような内容になりましたが、クラウドにはデメリットは無いのでしょうか?
たとえば、2000年代にクラウドが出現してから今まで、常に言われ続けているのが「セキュリティ上の懸念」です。それまでのコンピュータシステムは、社内のマシンルームやデータセンターの専用の区画に置かれて厳重に管理され、必要に応じて専用線で関連システムと接続するなど、非常にセキュアな環境に置かれていました。(オンプレミス(オンプレ))ただ、この方式は非常にコストがかかります。それでも、セキュリティのほうが大切であるということで、このコストは容認されていたのです。
それに対し、データセンター(自国内では無い場合もあります)のコンピュータを共用し、公開されたインターネットを介してそれを利用するクラウドコンピューティングに対して「不安」を感じるのは、ある意味では仕方のないことではあります。しかし、その「印象」は本当に正しいのでしょうか?
たとえば、セキュリティパッチについて考えて見ましょう。OSやアプリなどに脆弱性があった場合のセキュリティパッチの適用は、IT部門にとって悩みの種です。パッチはどんどん出てきますから、すべてを適用して最新に保つのは至難の業です。パッチがすべて適用されていない組織は、過半に及ぶという調査もあります。
クラウドサービスであれば、ベンダーの専任の担当者が24時間体制で監視・対応にあたっていますし、管理する数千のシステムに対して一括でパッチを当てることができます。自社運用とはコストも手間も比較になりません。これひとつとってみても、印象はだいぶ変わってくるのではないでしょうか。しかしその一方で、自社開発のアプリについてはクラウドベンダーは面倒は見てくれません。自社で面倒を見るしか無いのです。
つまり、「使い方と組み合わせ次第」であり、クラウドだから不安、オンプレだから安心、ということは無いということです。クラウドベンダー側も、セキュリティを強化したサービスを提供しています。自社とクラウドベンダーの間の責任分担や役割分担をきちんと理解してシステムを構築し運用すれば、セキュリティを維持しながらクラウドを活用することができます。
世界で最もセキュリティに厳しい組織と考えられるアメリカの情報機関ですら、数年前からクラウドへの移行を進めています。「クラウドはセキュリティが。。」と言っている段階ではなく、どのようにしてクラウドを使いこなすか、が問われているのです。
コンピュータシステムを取巻く環境や使い方が変わっていく中で、変化は避けられません。最新の技術について、怖がるだけでは無く、本質を理解して使いこなしていくことが大事なのでは無いでしょうか。
大越章司おおこししょうじ
株式会社アプライド・マーケティング 代表取締役
外資系/国産、ハードウェア/ソフトウェアと、幅広い業種/技術分野で営業/マーケティングを経験。現在は独立してIT企業のマーケティングをお手伝いしています。 様々な業種/技術を経験しているため、IT技…
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