先日金融機関の方々向けにDXのお話をさせて頂いたときに、金融庁のDXの定義を調べたのですが、面白いことがわかりました。
このコラムの第1回でも、DXは「明確な定義が無いままに使われている」状態だと言うことを書きました。多くの企業や人がさまざまな立場・さまざまな思惑からDXの話をしているのです。よくメディアなどで出てくるのがスウェーデンのウメオ大学の教授が言ったという言葉で、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」というものです。これはWikipediaにも出ていますので、よく見かけます。しかし、これではさすがに抽象的すぎて、何に取組めば良いのかわかりません。
ビジネスの世界でDXというと、やはり経産省が使っている「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」(DX推進ガイドライン)というのが、良く参照されているようです。これは実は、米調査会社のIDCの定義です。
ところが、金融庁のサイトを見てみると、ちょっと違う位置づけとなっています。
昨年公開された「金融モニタリングにおけるデジタライゼーションの取組状況」という資料を見てみると、金融機関が取組むべきデジタル化を「デジタライゼーション」と位置づけ、その下に「デジタイゼーション」と「デジタルトランスフォーメーション」を並列に置いているのです。「デジタイゼーション」は、従来から実施されてきたアナログ情報のデジタル変換など、業務効率化を目的とした取組みを指し、「デジタルトランスフォーメーション」は、顧客に新たな価値を提供するなど、既存のビジネスモデルを変革する取組みとされています。
ビジネスモデルという言葉が入っていますので、DX自体の解釈は経産省に近いと思いますが、そのDXそのものの位置づけが微妙に違います。経産省は「2025年の崖」で、企業は今すぐにでもDXに取組まないと、大変なことになると言っていますが、金融庁は、DXに取組むのは「主に大手金融機関、新興の金融機関及び金融参入を窺う非金融企業」と言っており、その他の金融機関は「デジタイゼーション」に注力すべし、という立場です。
経産省の定義と矛盾するようですが、これは金融機関特有の特殊な環境下では仕方ない側面もあるのでしょう。金融機関は他業種に比べて規制も多く、社外システムとの連携などを考えると、業務プロセスを自分たちだけが勝手に変えるわけにも行きません。(それは政府側の問題でもあるわけですが)そのような中、闇雲にDXを進めても、結局効率化が進まず、逆に体力を落としてしまう恐れもあります。現実を見た考え方と言えるでしょう。
この考え方は、先月のコラムでご紹介した「バイモーダル」に似ています。従来型と最新のテクノロジーをうまく組み合わせてビジネスを改革していくことが大切だということではないでしょうか。
大越章司おおこししょうじ
株式会社アプライド・マーケティング 代表取締役
外資系/国産、ハードウェア/ソフトウェアと、幅広い業種/技術分野で営業/マーケティングを経験。現在は独立してIT企業のマーケティングをお手伝いしています。 様々な業種/技術を経験しているため、IT技…
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