昨年も「進まない日本のDX」というコラムを書きましたが、それから更に1年経って、事態は改善するどころか悪化の一途を辿っているようです。1年前にはすでに「DX疲れ」という言葉がメディアを賑わしていましたが、先日のダイヤモンドオンラインの記事では『「DXに関わりたくない」大企業の社員が44%も!』という衝撃的な見出しを掲げていました。
この記事の元ネタは、昨年行われた調査です。従業員1,000人以上の大企業に勤務している社員を対象に「もしあなたがDXの推進活動に関わる場合、どのように感じますか?」という質問をしたところ、「関心がない」「面倒くさそう」「やりたくない」などのネガティブな回答をした社員が44%も居たのだそうです。これは確かに、衝撃的な数値です。政府がDXを推奨し、経営者はDXを推進せよと言い、世の中の空気としてもDXへの期待が高まる中、企業内で中核となってDXを推進すべき人達は冷めているのです。
さらに衝撃的なのは、40代の13%は「絶対に関わりたくない」と強い拒否を示しているということです。消極的な拒否ならばまだしも、組織を支える働き盛りが「絶対に嫌だ」というのは尋常ではありません。一体何が原因なのでしょうか。
その背景には、2つの要因があるように思えます。ひとつは、DXという捉えどころの無い目標を与えられて、成果をなかなかあげることができずに辛い立場に置かれている同僚を見てきたこと、そしてもうひとつは、やはりどこかに「変わりたくない」という意識を持っているからではないでしょうか。
DXが捉えどころの無いもので、様々な人がそれに振り回されている、という話は、まさにこのコラムの第1回で書きました。その理由の1つとして、用語の定義がきちんと共有されていないことを挙げましたが、残念なことにその状況はあまり変わっていないようです。というよりもむしろ、時間が経った分余計に混乱しているとすら見えます。もう一度原点に立ち返り、DXの目的と自社が置かれた状況を考えてアプローチを考え直すべきでしょう。
そして結構やっかいなのが、現場の「変わりたくない」という気持ちです。日本企業の強さは現場にあると言われますが、それは現場の担当者が個々に自分の業務を効率化してきたことで全体の効率が上がっているからです。そして、長くビジネスを行い、そのビジネスが成功していればいるほど、現状を変えることには慎重にならざるを得ません。経営者や政府が如何に「改革・改革」と叫んだところで、現場の受け止め方は冷ややかです。「現場を一番知っているのは自分たちだ」という思いと、「この、究極まで効率化したプロセスを壊されたくない」と考えるのは無理の無い事です。そして、それを説得し、突破していくことこそが経営陣に求められていることではないでしょうか。
いずれにせよ、冒頭にご紹介した昨年のコラムでも書いたように、DXのポイントはDX人材の確保です。その人材を確保する前に、人材の方に逃げられてしまっては、DXどころでは無くなります。DXを目指す経営者の悩みがまたひとつ増えたようです。
大越章司おおこししょうじ
株式会社アプライド・マーケティング 代表取締役
外資系/国産、ハードウェア/ソフトウェアと、幅広い業種/技術分野で営業/マーケティングを経験。現在は独立してIT企業のマーケティングをお手伝いしています。 様々な業種/技術を経験しているため、IT技…
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