2024年も後半に入り、さすがに生成AIに対する熱狂も落ち着いてきたようです。しかし生成AIの進化はまだまだ続いており、機能も精度も日に日に高まっています。生成AIに関する話題が少なくなっているように感じるのは、生成AIが当たり前のものとして人々の生活に溶け込んで来ている証拠なのかも知れません。
Microsoftは真っ先に生成AIの可能性に気づき、昨年から今年にかけてIT業界でも最高レベルの投資を行ってきました。今ではWindowsをはじめ、検索エンジンのBingや誰もが使っているオフィスソフトのMicrosoft 365でも、CopilotというAIアシスタント機能が使えるようになっています。その仕上げとして出してきたのが「AI PC」です。Copilotをワンタッチで呼び出せ、AI能力を強化したPCとして先頃発売されました。
そこで最近、「今のPCをAI PCに買い替えた方が良いのでしょうか?」というご質問を頂くことが多くなってきましたので、今回はそれについて書いてみたいと思います。先に結論を書くと、「慌てて買い替える必要は無いでしょう」ということになります。
AI PC自体が発表されたのは昨年ですが、製品として出荷が始まったのが今年の7月です。AI PCとは、簡単に言えばAI処理を高速化するハードウェアを搭載したPCです。通常のPCにはCPUやGPUが搭載されていますが、AI PCではAI処理を行うNPU(Neural Processing Unit)というハードウェアが必要なのです。発表から出荷まで時間がかかったのは、そのハードウェアを準備する時間が必要だったためでしょう。
しかし、これまでのPCでも何の問題も無くChatGPTやGeminiは使えています。何故PC側にNPUを持たせる必要があるのでしょう? その答えは、パフォーマンスとデータ保護にあります。
AI処理に莫大な演算パワーが必要なことは、過去のコラムでも触れてきました。AIの能力が高まるということは、処理がさらに増えることを意味します。すべてをクラウドのサーバーで行うのは限界があります。そこで、ユーザーのデバイス側でも少しAI処理を肩代わりしてほしいというのが、パフォーマンス上の理由です。膨大なデータをクラウドに送るとなると、通信回線が逼迫するなどの弊害もあります。AI PCはMicrosoftとIntelが策定した企画だそうですから、Intel製のハードウェアの販促という側面もあるのかも知れません。
もうひとつはデータの保護です。AIへの質問をそのままクラウドへ流すと、途中で傍受されてプライバシーが漏れたり、会社の機密情報が漏れる恐れがあります。なるべくユーザー側で処理を行うことで、重要なデータを外部に出さずにAIを利用することができます。
AI PCでは「Copilotキー」という新しいキーが必要とされていますが、これはあまり気にする必要は無いでしょう。このキーが無ければCopilotを使えないわけではないからです。従来通りメニューから起動することはできますから、少し手間がかかるだけです。
これらの理由から、データ保護に特別な関心が無ければ、急いでAI PCに買い替える必要は無いと考えられます。今のPCを買い替えるタイミングで考えれば良く、恐らく今後はAI PCが主流になっていくでしょうから、その時の選択肢は多くがAI PCになるのでしょう。
大越章司おおこししょうじ
株式会社アプライド・マーケティング 代表取締役
外資系/国産、ハードウェア/ソフトウェアと、幅広い業種/技術分野で営業/マーケティングを経験。現在は独立してIT企業のマーケティングをお手伝いしています。 様々な業種/技術を経験しているため、IT技…
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