先日、ドイツの民間企業が打ち上げたロケットが発射30秒後に爆発した、というニュースがありました。しかし、これは失敗では無く予定されたことで、「データを収集できて大成功だった」ということです。イーロンマスクのSpaceXも、どんどん打ち上げてバカスカ落としていますが、それに応じて信頼性も急激に上がっています。北朝鮮も、失敗したりあらぬ方向に飛んだりしていますが、核開発も含め、着実に開発は進んでいると言われます。
何が言いたいかというと、ロケットのような最先端技術では、失敗することがあたりまえで、失敗を通してさまざまなデータを収集して将来の成功に繋げることが常識だと言うことです。
翻って、日本でもJAXAや民間企業が賢明にロケットに取り組んでいますが、国全体に「失敗は許されない」という空気があるように感じます。失敗するととたんに「予算の無駄遣い」とか「技術力が足りない」とか言われてしまいます。少なくとも、あまりポジティブな報道はされません。「失敗しないよう頑張る」「もったいない」と考えるのは美徳ではありますが、最先端を切り開こうとするときには足枷になりかねません。日本で自動運転がなかなか進まないのも、根底には「自動運転で万一人が死んだら大変なことになる」という心配があるからなのではないでしょうか。
さらに話を広げると、やっとDXの話になります。DXによるデジタル化が何をもたらすかというと、意思決定の迅速化や環境変化への迅速な対応です。これによって企業は競争力を保ち、事業を拡大することができるのです。
それでは、環境変化への迅速な対応は何によって可能になるのでしょうか?答えはいろいろですが、クラウドを活用することでシステムを迅速に開発できるようになることもその一つです。システムを迅速に作ることができれば、新しいアイデアをすぐに試すことができ、存分に試行錯誤を繰り返すことでサービスをブラッシュアップさせることができます。クラウドはコスト面でも有利で、クラウドを使えばハードウェアやソフトウェアへの投資無し、または最小限の投資でシステムを構築することができます。これは「失敗した場合のコストが極端に安い」ことを意味します。ほぼノーリスクで試行錯誤を行えるのです。
たとえば、新規サービスを立ち上げる場合、これまでは(あるいは今でも)入念な市場調査を行い、プランを立てた上で完璧なシステムを構築し、満を持してサービスインする、といったことが行われていた(いる)のでは無いでしょうか? しかし、クラウドネイティブな企業の考え方はそうではありません。アメリカをはじめとする多くの企業は、「中途半端でもいいから、とりあえずサービスを公開してアイデアを試してみる」と、とにかくスピードを重視します。最初はタダで、後から課金モデルを採用すれば良いのです。
消費者の好みが細分化している今、事前にアイデアの有効性を予測するのは難しい、というか、ほぼ不可能です。そのため、「いろいろやってみて、いけそうなものを伸ばす」というアプローチが主流になっているのです。これはスタートアップだけで無く、Amazonのような大企業も同じです。
ロケットや自動運転に象徴される日本特有の完全主義は、一昔前ならともかく、今では成長の足枷になっているのではないかと思います。DXがなかなか進まないのも、その辺に原因の一部があるような気がします。失敗のコストが安くなった今、チャレンジを怖れない企業文化を育むべきではないでしょうか。
大越章司おおこししょうじ
株式会社アプライド・マーケティング 代表取締役
外資系/国産、ハードウェア/ソフトウェアと、幅広い業種/技術分野で営業/マーケティングを経験。現在は独立してIT企業のマーケティングをお手伝いしています。 様々な業種/技術を経験しているため、IT技…
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