「敵を知り己を知れば、百戦危うからず」。
紀元前に書かれたという「孫子の兵法」の一節。相手と自分のことを正しく知れば、戦に負けることはないという有名な教えです。ビジネスシーンは、勿論戦争ではありませんが、この考え方をビジネスシーンに置き換えて業績を伸ばしている会社も大変多いと言えます。私が勤めていたHISでも「孫子の兵法」は、社員の必読書の一つでした。実際、営業の現場でもこの考え方を取り入れて他社との厳しい競争を勝ち抜き著しい発展をとげたと言えます。
セミナーや研修を通して多くの営業マンの方々と接しますが、営業成績を伸ばす方は、必ずと言っていいほど「己を知り、相手を知る営業術」(私が勝手にこのように名付けていますが)を身につけていらっしゃいます。今回と次回は、営業成績を確実に上げるこの営業術について私の経験も交えてご紹介させていただきます。
今回はその第一弾「己を知る」編をお楽しみください。
■「己を知る」編
(1)自社の商品・サービスを知る
「営業成績が伸びない」と嘆いている方で、自社の商品やサービスについて熟知している人は少ないのではないでしょうか。逆に言えば自分が売っている商品・サービスについて熟知すれば、必ず成績は上がると言えるでしょう。HIS時代も販売する旅行商品について徹底して勉強会を開催し営業スタッフのレベルアップを図っていました。商品やサービスを把握出来れば、自信を持ってお客様にお勧めすることができるため、営業に苦手意識を持っていたスタッフでも面白いように営業成績が伸びていました。
この際の基準は、同業他社の営業マンより商品知識が圧倒的に上回ること。私も入社してすぐ、日本発着の主な飛行機の発着時間を暗記しましたが、お客様の前で「ストックホルム行きでしたら○○時発の○○便がおすすめです。」などと時刻表も見ず諳んじると効果抜群。こんな単純なことでも、お客様は「さすがプロ!」と新人の私を信頼していただけました。他社の営業マンが「お調べして、後ほどお返事します。」と言っているわけですからスピードでも上回り、契約成立の確率は断然高まるわけです。
また、商品・サービスのメリットと併せてデメリットも把握しておくことが大事だと考えます。「この商品は、価格は大変お安いのですが、目的地に到着までの乗り継ぎが多く、待ち時間も長くなります」などメリットと併せてデメリットとなる部分も率直に伝えるように心がけていました。デメリットをお伝えすることでかえってお客様の信頼も得られますし、お客様がどのポイントにメリットを感じているかも掴め、ニーズにあった商品の提案へとつながる流れをつくることも可能となります。このように「自分が売っているものについてしっかり知る」ことこそ営業マンの第一歩。自分の商品も良く知らずに売れるわけがありません。
(2)営業マンとしての自分自身を知る。
良く出来る営業マンは、自分の良さを理解し、それをいかしています。「話し下手だけれど、正確に着実な仕事をする」、「若くて経験はないけれどフットワークが軽くお客様のために動くことでは誰にも負けない」など、自分の良さを明確に把握し、それを更に伸ばしている営業マンは、大きな成果をあげています。また、そういう人は、自分の営業マンとしての「弱み」(人間ですから誰でも弱みはあります。)もしっかりと把握しています。そして、その弱みを克服する努力をしたり、自分がどうしても出来ない事は、上司、同僚、部下、取引先の力を借りるようにして組織として解決をはかっています。
意外なようですが、自分一人だけで営業成績を上げようとする人は、それほど伸びないものです。出来る人は、自分の弱みを知り、良い意味で周りの人に頼って、弱みを克服しています。強みを伸ばし、弱みを克服することは、営業マンとしてだけではなく、人間として成功するためにも大事な要素と言えるでしょう。
(3)自分が属しているマーケット・社会・環境を知る。
マーケット・社会・経済など自身を取り巻く環境について知ることも大変重要です。「自分の商品」、「営業マンとしての自分自身」が、世の中でどういう位置にあるかがわからなければ、正確に強みと弱みを把握することができず、結果的に物は売れないからです。その為には業界誌や経済新聞を読むのは勿論ですが、あらゆることにアンテナを伸ばすことが求められます。私たちは、取り巻く環境の中で生きているのですから、そのことを無視して上手くいくはずがありません。
皆さん、いかがだったでしょうか。本当に己を知ることが出来れば、営業成績は必ず上がります。
次回は、営業の成功精度を更に高めるために「相手を知る編」を書いてみたいと思います。
ご期待下さい。
只松 崇ただまつたかし
ビッグ・フィールド・マネージメント株式会社取締役
24歳の時、チラシ配りのバイトとして株式会社HISへ入社。同社の持つベンチャー精神に大いに共鳴し15年間勤務。途中、妻の脳腫瘍が発覚し専業主夫として看病・育児に1年間専念。妻の完治後、ビッグフィールド…
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