世界中の紛争地で取材にあたるジャーナリストが犠牲となる事件が続いています。自爆テロ事件が多発するアフガニスタンの首都カブールでは、事件現場に足を向けた通信社のカメラマンが爆死する事件が発生。中東のシリアでは2014年にイスラム国が建国宣言して以来、アメリカ人やイギリス人、そして日本人ジャーナリストまでもが命を奪われ続けてきました。トルコでは政権批判を掲げる記者が次々と拘束され、そのまま実刑判決を受ける事態に陥っています。東南アジアのミャンマーでも西部ラカイン州でのロヒンギャ難民問題を扱った記者が逮捕されたことが判明。フィリピンでは反権力の立場をとる新聞社の記者が殺害される事件が起こったばかりです。
取材にあたるジャーナリストやカメラマンは危機管理体制を第一に据えており、決して単独で取材・撮影に飛び込まないことを心がけています。必ず現場入りする折には、取材する国、その地域に精通した現地生まれのガイドや通訳、非常事態に直面した折の武装セキュリティーなど取材チームを構成することで危険を回避するよう努めています。さらに取材をスムーズに進めるためプレスカードや取材許可書、行程表などを用意しておくことで、検問や職務質問をパスしていくことも欠かせない危機管理の要素といえます。取材の輪郭にはこうした一定のルールが存在していると言ってもいいかもしれません。
しかしここ数年世界中で発生している事件に触れてみると、取材体制を整えていても、無差別と言えるほどの残虐な殺害事件が後を絶ちません。取材記者の殺害がテロリストにとって、自身の存在価値、破壊力を発信できるツールのような扱い方になっています。取材にあたるジャーナリストがターゲットとして足取りをたどられ、拉致・拘束・殺害、そしてその過程をインターネットでライブ配信していく。自分たちのアピール力を高めるためにテロリストがまるで死の広告代理店のような襲撃構造を組み立ててきています。
報道の自由がなくなった時、国家は崩壊しそこから独裁国家が生まれてくる。これは世界中の国々が辿ってきた負の歴史であります。権力の暴走を監視し続けること、これがその国で暮らす国民の自由を守る最後の牙城と言えるのかもしれません。多数のジャーナリストが現場で殺害され続ける事態への警鐘がいま世界規模で広がっています。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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