戦争で混乱したイラクであっても、自宅や学校から元気な子供たちの声を聞くことができる。子供たちの笑顔から生きる希望を感じることができた。
戦争の傷跡が残る中、子供たちの一番の喜びは友達と一緒に遊ぶこと、勉強をすること。机や椅子が戦争で壊されてしまっているなら床に座って勉強する。ノートや教科書がなければ、近隣から借りてきたもので学び、世界中からの国際支援で届けられた文具を使っていく。教室の中には勉強できる喜びをかみしめる子供たちの笑顔があった。地域ごとに学校の復興に大きな力をそそいでいく舵取りが進んでいた。
イラクでは村や地域で学校の再建を進めていくことが大きな課題であった。教育環境をととのえることが子供たちの犠牲を減らす一番確実な方法であると認識していた。外国からの国際支援や教育支援者も受け入れて、積極的に諸外国との関係も広げていた。中東のなかでも識字率や読書量がずば抜けているイラクでは、戦火を逃れた書物が姿を見せ始め、各家庭に大量に保管されていた書物がバグダッドの古本市で販売されることも頻繁になった。イラクにとって教育は生活を支える大きな柱でもあった。
戦争で破壊された病院では、残された医療施設で出産を迎える母親たちの姿があった。小さな子供たちがベッドに横になって診察を受けている。医者の数も激減したイラクにおいて子供たちの診察を受けることは困難を極めたが、地域ごとに復興に向けた国際支援活動の動きは確実に進んでいた。子供たちがこれからのイラクをささえていく。その思いは今のイラクを支える力でもあった。
イラクの人はこういっていた。「戦争があっても復興することはできる。日本に目を向けたとき、広島や長崎の悲しい事件のあとでも、世界で活躍する国に成長した。私たちのイラクも日本を見習うことはできる。子供たちがイラクを支え、そして変えていってくれる。」子供たちの笑顔がイラクの喜びそのものなのであった。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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