キューバ首都ハバナに立った。ここはサルサ音楽とラム酒と葉巻、そしてチェ・ゲバラに象徴される革命と情熱の国だ。スペイン統治時代の名残が残るこの街は市街地そのものが世界遺産に登録されているハバナ郊外にある小学校の入学式に参加した。
午前7時30分、何台ものマイクロバスが小学校にやってきた。中からはお母さんに手を引かれた子供たちが朱色の制服をまとって次々と飛び出してくる。
「ブエノスディアス!(おはようございます!)」
この日、キューバ全土で小学校入学式が行われた。国を挙げて子供たちの成長を祝うこの式典ではキューバの未来を担う子供たちにできる限りの教育を施していきたいという熱意に溢れかえっていた。
そしてこの入学式が行われた日は、キューバ革命の戦士チェ・ゲバラの命日とも重ねられていた。チェ・ゲバラとはキューバ革命を率いた指導者であり革命戦士、現在のキューバの基礎を作った人物である。キューバ国民にとってまさにキューバ建国の父として崇められている。
実際に入学式が始まると子供たちはゲバラの言葉を入学宣誓の言葉として述べた。「勇気と希望、そして行動を!」何度もこの言葉を繰り返す。
キューバでは教育や医療に関しては政府が無償提供するシステムになっており、各々のジャンルで子供たちの才能をいかし、世界に通用する人材を育てていくことが国家の指針となっている。
それ故、子供たちを支える地域の教育サポートも心強い。入学式を取り仕切るのは学校関係者だけでなく、小学校周辺に住む人たち、さらには退職された年配の方々が入学式の準備、チラシ作り、送迎バスの手配、緊急事態の医療準備まで行っていた。お祝いとして子供たちに手渡す一輪のバラまでも一つ一つ丁寧に包装紙でくるんでいた。
「チェ・ゲバラのように気は優しくも意志を貫く強い大人になってほしい」とどの母親たちも口を揃えていた。
入学式最後には国歌斉唱と合わせて『チェ・ゲバラに捧げる歌』を新入生たちは歌った。キューバらしさに満ちあふれたまさに”勇気と希望”の式典であった。
式が終わると、子供たちは一目散に街に飛び出し大好きなアイスクリーム屋に駆け込んだ。こんもりと盛られたストロベリーアイスクリームを片手に、満面の笑みをうかべていた。子供たちはキューバの宝である。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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