南アジアのバングラデシュ出身で日本国籍をもつ男性(36歳)が、中東を拠点とする過激派組織イスラム国に関わるテロリスト仲介者として拘束されました。現時点でイラク北部の収監施設で有志連合を牽引するアメリカ軍によって尋問が行われています。この男性は日本人女性と結婚し複数のこどもを抱え、2015年末から2016年初頭頃に家族で中東イスラム国に入国。シリア領内で過激派と行動を共にしていたことが確認されています。各国によるイスラム国掃討作戦の中、妻と2人の子供は空爆攻撃によって死亡。残り3人の子供がシリア領域で生き延びている可能性と父親であるこの男性がアメリカ軍によって拘束されたことが発表されました。
この男性に注視が集まった背景には、2016年7月1日、バングラデシュ首都ダッカ・グルシャン地区で発生した日本人7人を含む22人が殺害された外国人殺害テロ事件での実行犯仲介容疑があげられます。事件に関わった複数の実行犯は裕福な家庭に育ち、高等教育を受けてきた生活基盤があり、東南アジア諸国への留学経験から過激派組織に接触、暴力的な原理主義思想に影響を受け襲撃テロ事件を引き起こしたことが確認されました。この実行犯たちに過激派の薫陶を手向けたのが、日本国籍をもつこの男性であると指摘されています。もともとこの男性は祖国バングラデシュではヒンドゥー教徒として生まれ育ち、2002年に日本の大学に留学生として入学。2015年には大学の期限付き准教授に就任。この間にヒンドゥー教からイスラム教に改宗し、イスラム原理主義思想に傾斜。2014年にシリア領内で建国宣言が行われたイスラム国への情報・資金収集の準備を続けてきたことが想定されます。尋問の中ではバングラデシュのテロ事件とイスラム国アジアネットワークの繋がりを引き出すことが求められています。
4月にスリランカ最大都市コロンボを中心に発生したキリスト教徒の復活祭を狙った連続爆破テロ事件の実行犯である現地の過激派組織ナショナル・タウヒード・ジャマーの最高指導者ザフラン・ハシムも裕福な家庭、高等教育基盤、そして中東イスラム国への入国経歴から、過激派思想に感化されていった証跡が確認されました。イスラム国の狙い通り、過激思想が若者たちに染み込み、襲撃事件に結びついていくテロの実績が積み重なってきているといえます。
渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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