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コラム 人権・福祉

2020年03月10日

トランプ大統領によるアフガニスタン和平合意

 アフガニスタン情勢が動いています。中東のカタールの首都ドーハで行われたアメリカとイスラム組織タリバーンの和平協議。テロ攻撃を続けてきたタリバーンとアメリカ・トランプ政権による和平合意が調印され、アフガニスタンに駐留しているアメリカ軍が撤退する方針が発表されました。2001年9月11日に発生したニューヨーク・ワールドトレードセンター爆破テロ事件を受け、当時のアメリカ・ブッシュ大統領は、攻撃の黒幕であった国際テロ組織アルカイダの指導者であったオサマ・ビン・ラディンをかくまっていたタリバーン政権を攻撃。ここからアフガニスタンへの軍事介入が始まりました。あれから約19年を経て、アメリカ軍がアフガニスタンから撤退を始めます。

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 歴史的転換期と言える和平合意でありますが、その内容は実際にその効力を保持できるのか不安の声があがっています。特に指摘されるのは現在アフガニスタン警察に拘束されているタリバーン兵士・関係者の一部解放条件項目、そして国際テロ組織による攻撃停止や市民を巻きこむ事件の停止を掲げながら実際はタリバーン側に強制力はほとんど問われない条件など、その中身はタリバーン優位と言わざるえない内容が確認されています。今後、治安復興を担うアフガニスタン政府にとってアメリカ軍の歯止めが効かなくなったタリバーンが武装基盤の復興をすすめ、いままで以上にを大きな脅威となりえることは避けられません。アフガニスタンでは、昨年9月に行われた大統領選挙でアシュラフ・ガニ大統領が再選。選挙過程では、対立候補者側から選挙不正疑惑が指摘され政争が激化。政情不安が続き、治安悪化の要因となっていました。

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 アメリカ・トランプ大統領は、今年11月に大統領選挙を控えています。前回の大統領選挙戦では世界中の戦場からアメリカの若者たちを帰還させることを公約していました。実際に中東のシリアからアメリカ軍を撤退させ、アフガニスタンからもさらに兵力を撤退させることができれば、厭戦気分高まるアメリカ国内世論を味方に引き寄せることができます。トランプ大統領にとって外交とはディール、ビジネスであり大統領選挙優位の要因を得られるのであれば、今後のアフガニスタン情勢には興味なしという姿勢が際立っています。実際、タリバーンとの和平合意以前に中東のパレスチナ情勢でトランプ流パレスチナ和平案を発表。国際管理下にあるはずのエルサレムのイスラエルへの帰属やパレスチナ側へのユダヤ人入植一部公認などパレスチナ側の主張を無視したイスラエル寄りの和平案にアラブ諸国が猛反発。大統領選挙の大票田であるイスラエルを支援するユダヤ資本やキリスト教強硬派を意識した一方的な振る舞いに世界各国から非難が殺到。パレスチナ問題がさらなる混乱に落とし込まれました。アフガニスタン和平合意というディールにはアフガニスタン政府が担っていく治安復興の責務を注視し続けることが大切であります。

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渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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